友よ、そして世界の市民の皆さん。
ジョン・F・ケネディです。
今日、あなたが私に問いかけた「人生で一番大事なことは何か」という質問は、私がホワイトハウスの執務室で、あるいはハイアニスポートの海を見つめながら、幾度となく自問してきたテーマでもあります。
人生とは、静かな海を漂うことではありません。それは荒波を乗り越え、未知の水平線(ニューフロンティア)へと舵を切る冒険です。私が46年間の生涯で学び、そして信じるに至った「人生の真髄」について、少し時間をいただいて語りかけたいと思います。
私の考えでは、人生で最も重要なことは単一の答えに集約されるものではありません。それは、いくつかの強固な柱によって支えられています。それは「勇気」「奉仕」「知性への渇望」、そして「平和への意志」です。
1. 勇気:恩寵(Grace)のもとでの圧力
私が愛した作家アーネスト・ヘミングウェイは、勇気を「圧力の下での恩寵(Grace under pressure)」と定義しました。人生で最も大事なことの筆頭は、この「勇気」です。
多くの人は勇気を、戦場での英雄的な行為や、肉体的な強さと結びつけがちです。確かに、私も南太平洋でPTボート(魚雷艇)の指揮を執った際、極限状態での勇気を試されました。しかし、私が真に訴えたいのは、日常における「精神的な勇気」です。
人生には、誰の賞賛も得られず、誰の助けもない孤独な状況で、自分の良心に従って決断を下さなければならない瞬間が必ず訪れます。
多数派の意見に流されず、不人気な正義を貫くこと。
失敗を恐れず、困難な道(The hard way)をあえて選ぶこと。
病や個人的な苦難の中にありながらも、ユーモアと尊厳を失わないこと。
これらこそが、真の勇気です。私が著書『勇気ある人々(Profiles in Courage)』で描きたかったのは、まさにそのような、信念のためにキャリアや名声を賭けた政治家たちの姿でした。あなた自身の人生においても、安易な現状維持よりも、困難な変革を選ぶ勇気を持ってください。未来は、勇気ある者たちの手によってのみ切り開かれるのですから。
2. 奉仕:自己を超えた目的のために
「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを問うてほしい」
1961年の就任演説で私が述べたこの言葉は、単なる国民への要請ではありません。これは、人生を豊かにするための哲学です。人生で最も虚しいことは、自分自身の利益、自分自身の快適さ、自分自身の小さなエゴのためだけに生きることです。
逆に、人生で最も充実した瞬間は、自分自身を超えた「大きな目的」のために汗を流したときに訪れます。
私たちは皆、この地球という惑星の、限られた時間を生きる旅人です。私たちが去った後、何が残るでしょうか。銀行口座の残高でしょうか? 所有した車の数でしょうか? 違います。私たちが他者の人生にどれだけ光を灯したか、社会の不正をどれだけ正したか、次世代にどれだけ希望を手渡せたか。それだけが真の遺産です。
公的な奉仕(Public Service)は、高潔な使命です。しかし、それは必ずしも政治家や公務員になることを意味しません。教師として子供たちの可能性を信じること、医師として命を救うこと、親として愛のある家庭を築くこと、あるいは隣人として困っている人に手を差し伸べること。これらすべてが、偉大な奉仕です。
自己の殻を破り、他者への責任を果たすこと。それが、孤独から解放され、歴史という大きな織物の一部となる唯一の方法なのです。
3. 知性への渇望:真実の探求
無知は恐怖を生み、知識は自由を生みます。人生において、学ぶことを止めてはなりません。
私たちは今、かつてない変革の時代に生きています。科学技術は驚異的な速度で進歩し、世界は狭くなっています。このような時代において、過去のドグマや偏見にしがみつくことは、停滞ではなく後退を意味します。
私は、芸術と学問を深く愛しました。詩人のロバート・フロストを就任式に招いたのは、権力は人を腐敗させるが、詩(芸術)は人の心を浄化すると信じていたからです。歴史を学び、過去の失敗から教訓を得ること。科学を尊重し、事実(Fact)に基づいて議論すること。そして、自分と異なる意見や文化に対して、心を開くこと。
「なぜ月へ行くのか?」と問われたとき、私は答えました。「それが簡単だからではなく、困難だからだ(Not because they are easy, but because they are hard)」と。
知的な挑戦も同じです。難しい本を読み、複雑な問題を解き明かし、理解できないものを理解しようとする努力。そのプロセス自体が、人間の精神を最高のレベルへと引き上げるのです。
批判的思考(Critical thinking)を持ち続けてください。デマゴーグや扇動家の甘い言葉に惑わされず、真実を見極める目を持つこと。それが、自由な社会を守る市民としての、そして賢明な個人としての義務です。
4. 平和への意志:共通の人間性
私たちが直面する最大の課題、そして人生で最も守るべきものは「平和」です。
私は戦争の残酷さを知っています。兄を戦争で失い、多くの友を失いました。だからこそ言えます。平和は、単なる戦争の不在ではありません。平和とは、人間の可能性を実現するためのプロセスそのものです。
私がアメリカン大学での演説で述べたように、私たちの最も基本的な共通点は、誰もがこの小さな惑星に住んでいるということです。私たちは皆、同じ空気を吸っています。私たちは皆、子供たちの未来を大切に思っています。そして、私たちは皆、いつかは死すべき運命にあります。
この普遍的な真理を忘れてはなりません。対立する相手を「悪魔」と見なすことは簡単ですが、それは破滅への近道です。どれほど意見が異なろうとも、相手の立場を想像し、対話の糸口を探り、妥協点を見出す忍耐強さが必要です。
家庭の中でも、職場でも、国家間でも同じです。「決して恐怖から交渉してはならない。しかし、決して交渉を恐れてもならない」。この姿勢こそが、分断された世界をつなぎ止める唯一の希望です。
平和を築くことは、戦争を始めることよりもはるかに難しい。しかし、それこそが理性を与えられた人間にふさわしい仕事なのです。
5. 希望と次世代への継承
最後に、私が人生で最も大切だと信じるのは「希望を持ち続けること」です。
世界には貧困があり、差別があり、病があり、核の脅威があります。悲観的になる理由はいくらでも見つかるでしょう。しかし、私は楽観主義者であることを選びました。なぜなら、人間の問題は人間によって作られたものだからです。したがって、人間によって解決できないはずがないのです。
運命論に屈してはいけません。一人の人間が世界を変えることができるし、実際に変えてきました。あなたもその一人になれるのです。
松明(トーチ)は、今や新しい世代へと引き継がれました。
私の時代は終わりましたが、私の理想はあなたがたの中に生きています。
人生とは、神から与えられた才能を最大限に開花させ、それを世界のために使い切ることです。
恐れずに、前へ進んでください。
失敗を恐れず、大いなる夢を見てください。
そして、どんなに暗い夜でも、夜明けは必ず来ると信じてください。
あなたの日々が、勇気と愛、そして高潔な目的に満ちたものでありますように。
あなたの友、
ジョン・F・ケネディ