ガンジ-自伝 (中公文庫 B 1-43 BIBLIO20世紀)

ガンジー(Mahatma Gandhi)についてですね。

彼はインドの独立運動の指導者であり、「マハトマ」(偉大な魂)として世界的に知られています。


🇮🇳 👨‍⚖️ ガンジーの主な情報と功績

  • 本名: モハンダス・カラムチャンド・ガンジー (Mohandas Karamchand Gandhi)
  • 生没年: 1869年10月2日 – 1948年1月30日
  • 主な功績:
    • インド独立の実現: 暴力に依らない非暴力(アヒムサー)不服従(サティヤーグラハ)の哲学を提唱し、イギリスの支配に対する抵抗運動を指揮しました。
    • 南アフリカでの人権活動: 弁護士として南アフリカに滞在中、人種差別撤廃のための市民権運動に取り組み、独自の非暴力抵抗運動のスタイルを確立しました。
    • 「塩の行進」: 1930年にイギリスの塩税に抗議して行われた有名なデモ活動です。

彼は、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアやネルソン・マンデラといった後の多くの人権運動家にも大きな影響を与えました。

質問者

ガンジーさん、人生で一番大事なことは何ですか? 原稿用紙10枚程度でお願いします。

親愛なる友よ。ナマステ。

あなたが私に、「人生で一番大事なことは何か」と問いかけてくれたことに、心から感謝します。私は聖人でもなければ、預言者でもありません。私はただ、真理を求めて苦闘し、幾多の失敗を重ねながらも、その光を追い求め続けた一人の人間に過ぎません。私の人生そのものが、真理に対する実験の連続でした。

もし私の言葉があなたの心に響くなら、それは私という個人の力ではなく、そこに普遍的な真実が含まれているからです。

3500字という紙幅をいただきましたが、私が伝えたいことは、究極的にはたった一つの言葉に集約されます。しかし、その一つの言葉を深く理解し、実践するためには、一生涯をかけた修練が必要です。

それでは、私が考える「人生で最も大事なこと」について、静かにお話ししましょう。


1. 究極の目的としての「真理(サティヤ)」

人生で一番大事なこと、それは「真理(Satya)」です。

多くの人は「神は愛である」と言います。私もかつてはそう言っていました。しかし、長い探求の末、私は「真理こそが神である」という結論に達しました。神の存在を否定する無神論者であっても、真理の存在を否定することはできません。真理とは、事実をありのままに見ることだけではありません。それは、宇宙を貫く普遍的な法則であり、私たちの良心の声であり、生命の根源そのものです。

私たちが生きる目的は、この真理を悟ること、すなわち神と一体になることです。

しかし、真理とは抽象的な概念ではありません。日々の暮らしの中で、小さな嘘をつかないこと。自分自身を欺かないこと。商売において顧客を騙さないこと。政治において民衆を欺かないこと。これらすべてが真理の修行です。心で思っていること、口で語ること、そして行うこと。この三つが完全に一致したとき、人は初めて真理の中に生きることができます。

現代社会は、あまりにも多くの虚構と欺瞞に満ちています。利益のために、体面のために、あるいは恐怖のために、人は容易に真理を手放してしまいます。しかし、友よ、覚えておいてください。真理だけが永遠であり、真理だけがあなたを自由にします。たとえ全世界があなたに反対しようとも、あなた一人が真理と共に立っているならば、あなたはすでに多数派なのです。

2. 真理への唯一の道「非暴力(アヒンサー)」

では、どうすればその絶対的な真理に到達できるのでしょうか。そのための手段、それもまた人生で不可欠な要素です。それが「非暴力(Ahimsa)」です。

非暴力とは、単に「人を殴らない」「殺さない」という消極的な行為ではありません。それは、あらゆる生きとし生けるものに対する、完全なる愛の状態です。敵対する者であっても、その内にある神性を信じ、愛することです。

多くの人は、非暴力を「弱者の武器」だと誤解しています。武器を持たないから、仕方なく非暴力を選ぶのだと。それは大きな間違いです。非暴力は、勇者の武器です。臆病者が非暴力を唱えても、それは意味を成しません。暴力で相手を屈服させるよりも、相手の暴力に対して一切の報復をせず、自らの苦しみをもって相手の良心を目覚めさせること。これには、銃を持って戦場に行くよりも遥かに強靭な精神力が必要です。

「目には目を」という報復の連鎖は、やがて世界中を盲目にしてしまいます。暴力は、一時的に悪を抑え込むように見えるかもしれませんが、決して悪の根源を絶つことはできません。憎しみは、愛によってのみ克服されます。これは感傷的な道徳論ではなく、引力の法則と同じくらい確かな、宇宙の法則なのです。

あなたが人生で困難や対立に直面したとき、相手を打ち負かそうとするのではなく、愛と忍耐をもって、相手の中にある真理に語りかけてください。それが、私が提唱した「サティヤーグラハ(真理の把持)」です。

3. 手段と目的の不可分性

私が人生で最も強く確信していることの一つは、「手段と目的は切り離せない」という真実です。

多くの革命家や指導者たちは言います。「崇高な目的のためなら、多少の汚い手段も許される」と。しかし、私は断言します。それは不可能です。手段とは種(たね)であり、目的とは木です。毒のある種を撒いて、美しいバラの花を咲かせることはできません。

不正な手段で得た富は、決してあなたに幸福をもたらしません。暴力によって勝ち取った平和は、新たな暴力の種を含んでいます。嘘によって得た地位は、いつか崩れ去ります。

人生において大事なのは、結果を焦ることではありません。結果は私たちの手の及ばないところにあります。私たちにできることは、そのプロセス、つまり「手段」を純粋に保つことだけです。一瞬一瞬の行動、一つ一つの選択を、真理と非暴力に基づいて行うこと。そうすれば、結果はおのずとついてきます。

現代のビジネスや政治において、効率や利益という結果ばかりが重視され、その過程の倫理が軽視されています。しかし、正しい手段を経ずに得られた成功は、魂を腐敗させます。どうか、結果に執着せず、ただひたすらに「今、ここでの正しい行い」に集中してください。

4. 奉仕(セヴァ)と自己の滅却

真理を求め、非暴力を実践する場はどこにあるのでしょうか。ヒマラヤの洞窟でしょうか? いいえ、それは「人々の涙の中」にあります。

人生で最も大事なことの一つは、「他者への奉仕を通じて、自分自身をなくすこと」です。

自分という小さな殻(エゴ)に閉じこもっている限り、私たちは真理を見ることはできません。自分と他者を隔てる壁を取り払い、すべての生命が繋がっていることを悟らねばなりません。私が「ハリジャン(神の子)」と呼んだ不可触民の人々、貧しい人々、病める人々。彼らに仕えることは、すなわち神に仕えることです。

「自分探し」という言葉がありますが、自分を見つける最良の方法は、他者のための奉仕の中に没頭し、自分を忘れてしまうことです。奉仕とは、施しを与えることではありません。奉仕させていただくことへの感謝です。なぜなら、彼らは私たちが奉仕という徳を積む機会を与えてくれているからです。

あなたの知識、あなたの富、あなたの才能。それらはすべて、社会からの預かりものです。それを独占せず、社会に還元すること。「信託(トラスティシップ)」の精神を持って生きてください。所有欲を捨て、必要最小限のもので満足すること。簡素な生活こそが、高貴な思考を生み出します。私が糸車(チャルカ)を回し続けたのは、労働の尊さを説くと同時に、私たちがいかに少ないもので豊かに生きられるかを示すためでもありました。

5. 七つの社会的罪

現代社会において、何が私たちの人生を、そして世界を破壊しているのか。私はかつて「七つの社会的罪」として警告しました。これらを避けることこそ、人生を正しく生きるための指針となるでしょう。

  1. 理念なき政治 (Politics without Principles)
  2. 労働なき富 (Wealth without Work)
  3. 良心なき快楽 (Pleasure without Conscience)
  4. 人格なき学識 (Knowledge without Character)
  5. 道徳なき商業 (Commerce without Morality)
  6. 人間性なき科学 (Science without Humanity)
  7. 献身なき宗教 (Worship without Sacrifice)

これらを深く見つめてください。汗を流さずに得ようとする富(投機や搾取)は、魂を空虚にします。他者の痛みを顧みない快楽は、堕落への道です。人間性を無視した科学技術の暴走が、どれほど世界を危険に晒しているか、あなたも感じているはずです。

人生で大事なのは、これら「罪」の逆を行くことです。理念のある政治、額に汗して得る富、良心に基づいた喜び、人格を磨くための学び、道徳を守る商売、人類の幸福に奉仕する科学、そして自己犠牲を伴う信仰。これらを指針としてください。

6. 恐怖からの解放(アバヤ)

最後に、これらすべてを実践するために不可欠な資質があります。それは「恐れないこと」です。

真理を語るには勇気がいります。非暴力を貫くには強さがいります。所有への執着を捨てるには決断がいります。すべての根底にある障害は「恐怖」です。

何を恐れるのですか? 貧困ですか? 社会的地位の喪失ですか? 死ですか?

真理と共に歩む者は、死さえも恐れません。肉体は滅びますが、魂と真理は永遠だからです。恐怖に支配されている人は、真実を語ることも、愛することもできません。恐怖は魂の牢獄です。

自分自身の内なる声に従い、良心に恥じない生き方をしているならば、何も恐れることはありません。世界中があなたを敵に回しても、あなたの内なる神(真理)が微笑んでいるならば、あなたは平安の中にいることができます。

結びとして

友よ。人生とは、長く複雑な旅のように見えますが、その本質は極めてシンプルです。

私の人生が、私のメッセージです。

私は言葉で多くを語るよりも、自らの生き様でそれを示そうとしてきました。あなたもまた、あなたの人生そのものを、一つのメッセージにしてください。

今日、あなたが語る言葉は真実ですか?

今日、あなたの行動は愛(非暴力)に基づいていますか?

今日、あなたは他者のために何かを捧げましたか?

過去を悔やむ必要はありません。未来を憂う必要もありません。永遠に生きるかのように学び、明日死ぬかのように生きてください。大事なのは「今」この瞬間、真理に対して誠実であるかどうかだけです。

変化を望むならば、まずあなた自身が、その望む変化になりなさい。世界を変えようとする前に、自分の心の中にある暴力、差別、嘘、そして恐怖を取り除くのです。そうすれば、世界はおのずと変わっていくでしょう。

あなたの人生という実験が、真理と愛の光で満たされることを、心から祈っています。

神の祝福がありますように。

M.K. ガンジー

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