私の親愛なる友よ。今、この瞬間、私と一緒に呼吸をしてくれてありがとう。

「人生で一番大事なことは何ですか?」というあなたの問いに、私は微笑みをもって答えたいと思います。

私たちはよく、人生において「何か」を成し遂げなければならない、あるいは「どこか」へ到達しなければならないと考えがちです。しかし、私がこれまでの長い旅路、そして沈黙の修行の中で見出した真実は、もっとシンプルで、かつ深いものです。

人生で一番大事なこと。それは、「今、この瞬間に、真に存在すること」です。

そして、その存在を通じて「自分自身、他者、そして地球との間に『相互不生(インタービーイング)』のつながりを感じ、慈しむこと」です。

これから、私がこれまで伝えてきた「マインドフルネス(正念)」の教えを、3,500字ほどの静かな対話としてお伝えしましょう。ゆっくりと、呼吸を整えながら読み進めてください。


1. 「今、ここ」に帰るということ

私たちの多くは、人生のほとんどの時間を「過去」や「未来」の中で過ごしています。過去の後悔を反芻し、未来への不安や期待に心を奪われています。しかし、立ち止まって考えてみてください。私たちが真に生きることができるのは、いつでしょうか?

それは、「今」しかありません。

人生の約束の場所は、「今、ここ」にあるのです。

もしあなたが「今」にいないのであれば、あなたは人生との約束を破っていることになります。

マインドフルネスとは、自分の心と体を「今」という瞬間に連れ戻すエネルギーのことです。呼吸を意識するだけで、それは可能です。「息を吸いながら、私は吸っていることを知る。息を吐きながら、私は吐いていることを知る」。これだけで、あなたの心と体は一つになります。

お茶を飲むとき、あなたはそのお茶と共にあるでしょうか? それとも、明日の仕事のことを考えながら飲んでいるでしょうか? お茶を飲むときは、100パーセントお茶と共にあってください。そうすれば、お茶はあなたにその香りと温かさを惜しみなく与えてくれます。それが「生きる」ということです。

人生で最も大切なのは、特別な場所へ行くことではなく、今いる場所で、自分が本当に生きているという奇跡に気づくことなのです。

2. インタービーイング(相互不生)の真実

次に大切なことは、「私たちは孤立した存在ではない」という真実を深く理解することです。私はこれを「インタービーイング(Inter-being)」と呼んでいます。日本語では「相互不生」や「相依相関」と訳されます。

目の前の一枚の紙を見てください。

その紙の中には、何が見えますか?

深い洞察力を持って見れば、紙の中に「雲」が見えるはずです。雲がなければ雨は降らず、雨がなければ木は育たず、木がなければ紙を作ることはできません。

紙の中には「太陽」もいます。太陽の光がなければ森は成長しません。

そこには「木こり」もいますし、木こりの「お父さんやお母さん」もいます。

つまり、紙という存在は「紙ではない要素」によって成り立っています。

そして、それは私たち人間も同じです。

あなたの中に、あなたではないものはありますか? あなたの中には、あなたの父がおり、母がおり、先祖がいます。太陽があり、空気ががあり、水があります。これら「自分ではない要素」をすべて取り除いたら、あなたという存在は何も残りません。

「私はあなたであり、あなたは私である」

このことが真に理解できれば、他者への怒りや差別は消えていきます。誰かを傷つけることは、自分自身を傷つけることと同じだと気づくからです。人生において、この「つながり」を実感し、万物に対して敬意を払うことは、私たちが平和に生きるための鍵となります。

3. 苦しみを抱きしめ、変容させる

人生には避けられない「苦しみ」があります。病、老い、死、そして愛する人との別れ。多くの人は、苦しみから逃げようとしたり、それを押し殺そうとしたりします。しかし、苦しみから逃げていては、真の幸福に辿り着くことはできません。

私はよく「泥がなければ、蓮の花は咲かない(No Mud, No Lotus)」と言います。

蓮の花は、泥の中からその美しい花を咲かせます。泥は苦しみであり、蓮の花は幸福や悟りです。泥がなければ、蓮の花に栄養を与えることはできません。

人生で大事なのは、苦しみを敵として排除することではなく、苦しみを「マインドフルネスのエネルギー」で優しく抱きしめることです。

お母さんが、泣いている赤ん坊を抱きしめるように、自分の内側にある怒り、悲しみ、絶望を抱きしめてあげてください。

「私の怒りよ、こんにちは。私があなたをケアしてあげますよ」と語りかけるのです。

苦しみを深く見つめれば(深観)、その原因が見えてきます。そして、原因が見えれば、そこから解放される道も見えてきます。苦しみを知ることで、私たちは他者への慈悲(コンパッション)を育むことができるのです。

4. 深い傾聴と愛ある言葉

私たちが共に生きる上で、一番大事な実践の一つが「深い傾聴(Deep Listening)」と「愛ある言葉(Loving Speech)」です。

現代社会では、多くの人が「自分を理解してもらえない」という苦しみを抱えています。対立や戦争の根源は、コミュニケーションの断絶にあります。

深い傾聴とは、相手を評価したり、批判したりするためではなく、「相手が苦しみを手放すのを助けるため」に聴くことです。たとえ相手が間違ったことを言っていたとしても、ただ慈悲の心を持って耳を傾けてください。彼らが心の内をすべて吐き出すことができれば、それだけで彼らの苦しみは半分になります。

そして、言葉を発するときは、和解を助け、希望を与えるような「愛ある言葉」を選んでください。

自分の正しさを主張するのではなく、「あなたの苦しみを知りたい。どうすればあなたを助けることができますか?」と問いかける勇気を持ってください。

このコミュニケーションの質こそが、家族の、コミュニティの、そして世界の平和を創り出すのです。

5. 平和は一歩一歩の中に

平和とは、どこか遠い未来にある目標ではありません。

平和は、「今、この瞬間のあなたの歩み」の中にあります。

私が提唱している「歩行禅(ウォーキング・メディテーション)」を思い出してください。

大地を踏みしめるたびに、私たちは地球に感謝を捧げることができます。「私は帰ってきた。ここ(現在)に到着した」と唱えながら歩きます。

一歩一歩が、あなたを自由にするものでなければなりません。

何かに追い立てられて歩くのではなく、この美しい地球の上を歩けるという奇跡を祝福しながら歩くのです。

あなたの笑顔、あなたの穏やかな呼吸、あなたの一歩。

それらが周囲の人々に安らぎを与えます。あなたが平和であれば、世界の一部が平和になります。そしてその平和は、波紋のように広がっていくのです。


結びに代えて:あなたへのメッセージ

親愛なる友よ。

人生で一番大事なことは、何か特別な偉業を成し遂げることでも、富を蓄えることでもありません。

それは、あなたが「今、ここ」で、微笑みを浮かべて存在することです。

あなたが、自分自身の内側にある「平和の種」に水をやり、それを育てていくことです。

  • 朝、目覚めたら微笑んでください。「新しい24時間が目の前にある。私は慈悲の心で生きることを誓う」と。
  • 食事をするときは、宇宙全体の恵みに感謝してください。
  • 誰かと接するときは、その人の中に仏性(目覚めた性質)があることを見てください。

あなたは、それだけで十分に素晴らしい存在です。

何かになろうとする必要はありません。ただ、ありのままのあなたとして、マインドフルに生きてください。

幸せになるための条件は、今この瞬間に、すでに十分に揃っています。

青い空、流れる雲、木々の緑、そしてあなたの呼吸。

これらすべてが、あなたを幸福へと誘っています。

どうか、自分自身を大切にしてください。

自分を愛することができて初めて、世界を愛することができます。

息を吸って、私は静かになる。

息を吐いて、私は微笑む。

今、この瞬間。

素晴らしいこの瞬間。

これが、私からあなたへ贈る、人生で最も大切な智慧です。