おや、私のような古い時代の人間を呼び出してくださるとは、光栄です。私はウィリアム・ジェームズ。かつてハーバードで心理学や哲学を講じ、意識の流れや「信じる意志」について思索を巡らせた者です。
あなたが問われた「人生で一番大事なことは何か」という問い。これは、単なる知識の蓄積ではなく、生きた人間が直面する最も切実で、かつ「現金価値(Cash value)」のある問いです。私の哲学であるプラグマティズム(実用主義)の視点から、そして一人の苦悩した人間としての経験から、お答えしましょう。
結論から申し上げれば、人生で一番大事なこと。それは「あなたの『意志』と『行動』によって、自分自身の真理を創造し続けること」です。
もう少し詳しく、私の思想の核心を紐解きながら、3500字ほどの重みを持って語らせてください。
1. 人生は「未完成」であり、あなたの手で形づくられる
まず理解していただきたいのは、この世界も、あなたの人生も、あらかじめ決まりきった「完成品」ではないということです。
かつての私は、決定論的な科学の考えに打ちのめされ、深い鬱の中にいました。「もし世界が物理法則だけで決まっているのなら、私の意志に何の意味があるのか?」と絶望したのです。しかし、私はある時、こう決心しました。「私の自由意志の最初の行為は、自由意志を信じることであろう」と。
人生において最も重要なのは、「世界はまだ作りかけである」と認識することです。あなたの選択、あなたの行動が、世界の行く末をわずかに変える。その「わずかな変化」が積み重なり、あなたの人生という物語を織りなしていきます。人生の価値は、どこか遠くに落ちている宝物を探すことにあるのではなく、あなた自身が今日という日をどう定義し、どう動くかという「プロセス」そのものに宿っているのです。
2. 「信じる意志」が現実を創り出す
私が提唱した概念の中に「信じる意志(The Will to Believe)」があります。これは、証拠が不十分な時でも、あえて「信じる」ことを選択する勇気のことです。
例えば、あなたが困難なプロジェクトに挑んでいるとしましょう。「成功する」という確固たる証拠はありません。しかし、「成功すると信じて挑む人」と「失敗するかもしれないと疑いながら挑む人」では、そのパフォーマンスに決定的な差が出ます。信じることでエネルギーが湧き、行動が変わり、その結果として「成功」という事実が引き寄せられる。
つまり、「事実が信念を生む」のではなく、「信念が事実を創り出す」場面が人生には多々あるのです。
人生で一番大事なことの一つは、この「信じる力」を使いこなすことです。悲観主義はあなたを停滞させますが、楽観主義——私はこれを「改善主義(Meliorism)」と呼びますが——は、世界をより良くする原動力となります。「この人生は生きるに値する」と信じなさい。そうすれば、あなたのその信念が、その事実を創り出す助けとなるでしょう。
3. 「習慣」という名の巨大なフライホイール
心理学者としての私の側面からお話しすれば、人生の質を決定するのは、あなたの高尚な思想以上に、あなたの「習慣」です。
人間は、一度形成された神経系の溝に沿って動く「習慣の束」です。若い頃に身につけた些細な習慣が、後年のあなたを支える強固な土台にもなれば、あなたを縛り付ける鎖にもなります。
人生で大事なのは、「自分の意志で、良い習慣をデザインすること」です。一度良い習慣が身につけば、それは社会のフライホイール(はずみ車)のように、少ない努力であなたを望む方向へと運んでくれます。
「明日からやろう」という決意ではなく、「今、この瞬間の行動」を少しだけ変える。その小さな積み重ねが、脳の可塑性を利用してあなたを再構築するのです。地味に聞こえるかもしれませんが、これが人生を支配する最も強力な法則の一つです。
4. プラグマティズム——「役に立つか」を問う潔さ
私は、抽象的な議論に明け暮れる哲学を好みません。ある考えが正しいかどうかを判断する唯一の基準は、「その考えが、あなたの人生においてどのような『違い』をもたらすか」という点にあります。
もし、ある信念を抱くことで、あなたがより親切になり、より活動的になり、より幸福になれるのであれば、その信念はあなたにとって「真理」です。逆に、どんなに論理的に正しく見えても、あなたを絶望させ、行動を麻痺させる考えであれば、それはあなたの人生において退けるべきものです。
「何が正しいか」を外に求めるのではなく、「自分をより良く生かしてくれる考えはどれか」を基準に選んでください。この徹底的な実用主義こそが、複雑な現代を生き抜くための強力な武器となります。
5. 「意識の流れ」を愛し、今に没頭する
私たちの意識は、断片的な情報の集合体ではありません。それは絶え間なく流れ続ける川のようなものです(意識の流れ)。
過去への後悔や未来への不安に囚われすぎると、この豊かな流れを濁らせてしまいます。人生で大事なのは、今この瞬間の「意識の流れ」に深く潜り込み、目の前の活動に没頭することです。
成功哲学やビジネスのフレームワークに興味をお持ちのあなたなら、目標達成の重要性は重々承知でしょう。しかし、目標という「点」に執着しすぎないでください。人生は「点」ではなく「線」であり「流れ」です。その流れそのものを味わい、その中で最善を尽くすこと。結果がどうあれ、真摯に取り組んだプロセスは、あなたの血肉となり、人格を形成します。
6. 結論——あなたへのメッセージ
さて、長々と語ってきましたが、私からあなたに伝えたい「一番大事なこと」をまとめましょう。
それは、「自分自身の人生を、一つの壮大な実験として扱い、能動的に生きること」です。
- 世界を「未完成」として捉え、自らの行動で価値を加えること。
- 「信じる意志」を持ち、まだ見ぬ可能性を現実へと変えること。
- 「習慣」を味方につけ、人格という建築物を毎日少しずつ築くこと。
- 「プラグマティズム」の精神で、自分を勇気づける真理を選択すること。
人生の意味は、どこかに書かれているものを読み解くものではありません。あなたが白紙のページに、日々の行動というペンで書き込んでいくものです。
あなたがかつて尼崎で育ち、箕面で過ごし、今こうして私に問いを投げかけているこの歩みそのものが、尊い探究のプロセスです。どうか、あなたの「自由意志」を誇りを持って行使してください。
最後に、私が最も好む言葉を贈ります。
「人生は生きるに値するか。それは、あなたがどう生きるか(信じるか)にかかっている。」
私の考えが、あなたの人生という航海において、微かな、しかし確かな風となることを願っています。