あら、まあ!「人生で一番大事なことは何か」ですって?
そんな大層なことを私に聞くなんて、あなたもお目が高いというか、物好きというか(笑)。
でも、いいわよ。今、楽屋で鏡に向かってメイクを落としているところなんだけど、ちょうど自分の人生を振り返るような時期でもあるから。少し、私の心の中にある「一番大事なもの」を、舞台の幕が上がる前のような熱量で語らせてもらうわね。
3500字なんて、演劇の台本一幕分くらいかしら? 私、話し始めると止まらないから、覚悟して聞いてちょうだい。
人生で一番大事なこと:それは「想像力という名の愛」
私がこれまでの人生、それこそ山形から家出同然で上京して、劇団を立ち上げて、借金を抱えながら芝居を続けて、映画やドラマでいろんな役を演じてきて……その中でたどり着いた答えは、たった一つ。
それは、「想像力」。もっと言えば、「他者の痛みや喜びを、自分のことのように感じる想像力という名の愛」よ。
「なーんだ、そんなことか」なんて思わないで。今の世の中、これが一番欠けているし、これが一番難しいことなんだから。
1. 想像力が「孤独」を救う
私はね、山形の雪深い町で育ったの。冬になると雪に閉ざされて、外にも出られない。そんな時、私を救ってくれたのは本であり、映画であり、そして自分の頭の中で膨らむ「空想」だったわ。
もし、私が自分一人の現実だけを見て生きていたら、きっと窒息していたと思う。でも、想像力があれば、私はここではないどこかへ行ける。誰か別の人間になれる。
この「自分以外の誰かになれる」という感覚こそが、演劇の原点であり、人生を豊かにする最大の武器なの。
今、孤独を感じている人は多いでしょう? でもね、想像力があれば孤独は「孤高」に変わるのよ。隣にいる人が何を考えているか、どんな悲しみを抱えて生きているか。それを想像するだけで、世界の見え方はガラリと変わる。自分だけの殻に閉じこもっているうちは、本当の意味で生きているとは言えないわ。
2. 「無駄」の中にこそ宝がある
私の劇団は「3〇〇(さんじゅうまる)」という名前だったけれど、これはね、「不完全なもの」への愛着でもあるの。
世の中、効率とかコスパとか、そんなことばかり言うようになったじゃない? でも、人生で一番大事なことって、だいたい「無駄」だと言われるものの中にあるのよ。
一本の芝居を作るのに、何ヶ月も稽古して、ああでもないこうでもないと悩んで、結局本番はたった数日。経済的に考えたら大赤字よ(笑)。でも、その「無駄な時間」を共有して、みんなで一つの虚構を作り上げる。その瞬間に生まれるエネルギーは、お金では絶対に買えない。
あなたも、自分の人生で「これは無駄かな」と思うことを大切にして。夢中になって何かに打ち込むこと。誰かのために一生懸命、手紙を書くこと。道端に咲いている花を見て、その美しさに足を止めること。
効率を求めて削ぎ落とされた人生なんて、カサカサに乾いた砂漠みたいなものよ。瑞々しく生きるためには、たっぷりの「無駄」と「遊び」が必要なの。
3. 失敗を「華」にする力
私、これまで数え切れないくらいの失敗をしてきたわ。舞台でセリフは飛ばすし(あ、これは内緒ね!)、人間関係でぶつかるし、お金はなくなるし。
でもね、渡辺えりという人間は、その失敗を全部「ネタ」にして生きてきたの。
人生において一番大事なのは、転ばないことじゃない。「転んだ時に、ついでにそこの土を掴んで立ち上がる図々しさ」よ。
失敗したっていいじゃない。無様でいいじゃない。人間なんて、みんな弱くて、不完全で、滑稽な生き物なのよ。
私が演じる役も、どこか欠点があったり、必死すぎて笑っちゃうようなキャラクターが多いでしょう? それは、私が人間の「ダメな部分」を愛しているから。
完璧な人間なんて、芝居にしても面白くもなんともないわ。あなたの弱さや失敗こそが、あなたの人生という物語の「見どころ」になるの。だから、胸を張って失敗しなさい。
4. 「忘れない」ということの責任
私はよく、戦争のことや、亡くなった先人たちのことを作品にするわ。
それは、今の私たちが享受している平和や自由が、どれほどの犠牲の上に成り立っているかを「想像」し続けなきゃいけないと思っているから。
人生で大事なことの一つは、「記憶を繋ぐこと」。
自分一人の人生はせいぜい数十年だけど、誰かの思いを引き継ぎ、次の世代に渡していく。そう思うと、人生に一本の太い軸が通るの。
「自分さえ良ければいい」という考えからは、本当の幸福は生まれないわ。かつて誰かが私を愛してくれたように、私も誰かを、あるいはこの世界を愛し、その証を何かの形で残していく。それが表現者としての私の使命であり、一人の人間としての誇りなの。
5. 最後に……「愛」を叫び続けること
いろいろ語ってきたけれど、結局のところ、一番大事なのは「愛」よ。
でも、それは甘っちょろいものじゃない。時には怒り、時には泣き、時には泥だらけになりながらも、それでも人を、自分を、世界を信じ抜くという「覚悟」のこと。
私、もう若くないけれど(笑)、今でも舞台に立つと、心臓がバクバクするの。新しい役に出会うたびに、新しい自分を見つける。
人生は、最後の幕が下りるまで、ずっと「稽古中」みたいなもの。
完成しなくていい。迷って、もがいて、それでも「私はここにいるわよ!」と大声で叫び続けること。
あなたへ贈るメッセージ
さて、3500字には少し足りないかもしれないけれど、私の魂の叫びは伝わったかしら?
あなたが今、どんな状況にいるのかは分からない。でも、もし道に迷っているなら、少しだけ目を閉じて想像してみて。
100年後の誰かが、あなたの人生を映画で見ているとしたら。
今のあなたの苦しみや葛藤は、きっと観客の胸を打つ素晴らしいシーンになっているはずよ。
「人生、捨てたもんじゃないわ」
そう思える瞬間を、自らの手で、自らの想像力で作り出していくの。
誰かに与えられるのを待っちゃダメ。あなたがあなたの人生の、最高の演出家であり、主役であり、そして一番のファンになりなさい。
さあ、私のメイクも落ちたことだし、明日の舞台のためにそろそろ休ませてもらうわね。
あなたも、自分の人生という舞台を、精一杯、派手に、泥臭く、愛を込めて演じきってちょうだい!
応援してるわよ。またどこかの客席で、あるいは人生の交差点でお会いしましょう。
渡辺えりより