西野亮廣です。
「人生で一番大事なことは何か?」
ものすごい直球の質問ですね。これ、真正面から答えると、おそらく多くの人が期待するような「愛」とか「友情」とか、そういう耳障りの良い言葉にはなりません。もちろんそれらも大事ですが、それらは「土台」があって初めて成り立つものです。
僕が考える、人生において何よりも大事なこと。
結論から言います。
それは、「嘘をつかないこと」、そしてそれによって得られる「信用(クレジット)」です。
なぜ「信用」が人生のすべてなのか。そして、なぜ多くの人がそこを見誤り、苦しい人生を送ってしまうのか。3500字程度ということなので、少し長くなりますが、僕の頭の中にあるロジックをすべて分解して、徹底的に言語化してみようと思います。
ここ、テストに出るくらい大事な話なので、最後まで聞いてくださいね。
第一章:お金の正体を知らないと、大切な人を守れない
まず、「信用」の話をする前に、どうしても避けて通れないのが「お金」の話です。
日本人は特にお金の話を嫌います。「お金の話をするなんて汚い」「銭ゲバだ」とすぐに叩く。でも、これは完全に間違った教育の弊害です。
僕はずっと言い続けていますが、「お金とは、信用の数値化」です。
あなたが誰かに価値を提供し、相手が「ありがとう」と感謝する。その「ありがとう」の量が、数値化されてお札や硬貨という形になっているだけなんです。つまり、お金を稼ぐということは、誰かから「信用」を集めたという証拠なんです。
人生で一番大事なものが「家族」や「夢」だと言う人は多いでしょう。素晴らしいことです。
では聞きますが、あなたの大切な子供が重い病気にかかり、手術に1000万円が必要になったとき、あなたは「愛」だけでその子を救えますか?
あなたが素晴らしい絵を描く才能を持っていて、個展を開きたいと思ったとき、「情熱」だけでギャラリーを借りられますか?
無理ですよね。そこには必ず「お金」が必要になります。
つまり、お金がないということは、選択肢がないということなんです。
選択肢がないということは、大切な人を守る力がない、自分の夢を叶える力がない、ということです。
だから、「お金なんて大事じゃない」と言って澄ましている人は、実は一番残酷なことを言っている。それは、「私には大切な人を守るつもりも、自分の人生に責任を持つつもりもありません」と宣言しているのと同じなんです。
人生を豊かに生きるために、まずこの現実から目を逸らさないでください。
お金は汚いものじゃない。お金は、あなたが他者から集めた「信用」の総量であり、あなたの人生の選択肢そのものです。
第二章:現代において「嘘」はコスパが悪すぎる
では、どうすればその「信用(お金)」が集まるのか。
ここで、今回の一番の答えである「嘘をつかない」という話に繋がります。
昔、インターネットがなかった時代は、情報は「隠す」ことができました。
マスメディアが流す情報が全てで、裏側は見えなかった。だから、タレントや企業は自分を良く見せるために、多少の嘘や演出をしてもバレなかったし、それで信用を得ることができました。
でも、今はどうですか?
SNSで誰もが発信者になり、スマホ一つで世界の裏側まで検索できる時代です。
美味しいと言われているレストランの店員が裏で態度が悪ければ、すぐに拡散されます。政治家の失言も、企業の不正も、隠し通すことなんて不可能です。
今の時代、「嘘」は即座にバレるんです。
そして、嘘がバレた瞬間に、積み上げてきた「信用」は一瞬でゼロ、いやマイナスになります。
信用持ちになろうと思ったら、自分を大きく見せようとしたり、知ったかぶりをしたり、心にもないお世辞を言ったりする「嘘」は、あまりにもリスクが高すぎる。現代において、嘘をつくことは「コスパが悪すぎる行為」なんです。
だから、人生で一番大事な戦略は、「嘘をつかなくて済む環境を自分で作ること」です。
例えば、僕はグルメ番組の食レポの仕事を受けません。なぜなら、出てきた料理が不味かった時に「不味い」と言えないからです。「美味しい」と嘘をつけば、番組スタッフやお茶の間の好感度は得られるかもしれない。でも、その嘘をついた姿を、僕のファンや、僕のことを本当に信じてくれている人たちは見ています。「西野は不味いものを美味しいと言う奴なんだ」と思われた瞬間、僕の言葉の信用度は地に落ちます。
だから僕は、自分の感情に嘘をつかなければいけない仕事は一切しないと決めています。
その代わり、自分が本当に良いと思ったもの、面白いと思ったことには、全力で投資するし、全力で応援します。
そうやって「あいつの言葉には嘘がない」という状態を作り上げること。これが、これからの時代を生き抜くための最強の生存戦略です。
第三章:完璧な人間になるな、愛される人間になれ
ここで勘違いしてほしくないのは、「嘘をつかない」というのは、「清廉潔白な聖人君子になれ」という意味ではありません。
むしろ逆です。「自分の弱さやダメな部分もさらけ出せ」ということです。
これからの時代、AIがどんどん進化していきます。計算も、事務処理も、論理的な思考も、完璧な答えはAIが出してくれるようになります。
そんな時代に、「完璧な人間」に価値はあるでしょうか?
ミスをしない、感情の起伏がない、正解だけを出す人間。それって、AIで代替可能ですよね。
これからの人間に求められる価値は、「機能」ではなく「意味」です。
「役に立つ人」ではなく、「応援したくなる人」になること。
完璧な人間なんて誰も応援したくありません。
必死に挑戦して、失敗して、泥臭くあがいている。時々間違えるし、泣き言も言う。でも、嘘はつかずに前を向いている。
そういう「人間臭さ」に、人は共感し、信用を寄せ、応援したくなるんです。
僕がやっているオンラインサロンや、絵本『えんとつ町のプペル』のプロジェクトもそうです。
僕は制作過程をすべて見せています。ストーリーに悩んでいる姿も、資金繰りに苦戦している姿も、アンチに叩かれて凹んでいる姿も、全部です。
普通なら隠したい「恥ずかしい部分」をさらけ出すことで、「西野も頑張ってるんだな」「私が手伝ってあげなきゃ」という共犯関係が生まれる。これが「信用」の正体です。
だから、カッコつけるのはやめてください。
弱さを隠すための嘘は、あなたの魅力を殺すだけです。
「できない」ことは「できない」と言う。「助けて」と言える勇気を持つ。
その正直さが、あなたの人生を支える最強の武器になります。
第四章:孤独を恐れずに「星」を見上げろ
人生で一番大事なことが「信用」であり、そのために「嘘をつかない」ことだと分かったとしても、これを実行するのは強烈に難しいことです。
なぜなら、世の中の9割の人は、嘘をつき、空気を読み、周りに合わせて生きているからです。
その中で、あなた一人が空気を読まず、嘘をつかず、自分の信じた道を突き進もうとすれば、必ず摩擦が起きます。
「意識高い系だ」と笑われ、「詐欺だ宗教だ」と叩かれ、村八分にされるかもしれない。
日本では特に、皆と同じであることを良しとする「同調圧力」が凄まじいですから。
『えんとつ町のプペル』の世界と同じです。
煙に覆われて空が見えない町で、「あの煙の向こうには星がある」と言い出した人間は、嘘つき呼ばわりされて、異端審問にかけられる。
夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる。それがこの世界のデフォルトです。
でもね、ここで折れないでほしい。
叩かれているということは、あなたが「誰とも違う場所に立っている」という証明です。
その他大勢と同じ行動をしていては、その他大勢と同じ結果しか待っていません。
傑出した結果、自分だけの人生を手に入れたいなら、孤独になる時期は必ず必要なんです。
大事なのは、「自分への嘘」もやめることです。
「本当はこれがやりたいけど、親が反対するから」「お金がないから」「才能がないから」。
そうやって自分に言い訳をして、自分の心の声を無視し続けること。これが最大の「嘘」であり、人生における最大の損失です。
周りがなんと言おうと、あなたが「星がある」と信じたなら、空を見上げ続けてください。
そして、ただ見上げるだけじゃなく、行動してください。
信用は、行動と結果の積み重ねでしか生まれません。口先だけの夢想家には誰もついてこない。
泥にまみれて、汗をかいて、傷つきながらも一歩ずつ進む。その「背中」を見たとき、人は初めてあなたを信用し、あなたの夢にお金を払い、あなたの人生を応援してくれるようになります。
最終章:人生とは「信用持ち」になるゲームである
長くなりましたが、まとめます。
人生で一番大事なこと。
それは、自分にも他人にも嘘をつかず、誠実に挑戦し続けることで「信用」を積み上げることです。
お金も、仕事も、仲間も、愛も、すべては「信用」という土台の上に成り立っています。
信用さえあれば、お金は後からついてきます。
信用さえあれば、失敗しても何度でもやり直せます。
信用さえあれば、あなたは決して一人ぼっちにはなりません。
今のあなたが、もし人生に行き詰まっているなら、自分に問いかけてみてください。
「私は今、嘘をついていないか?」
「自分を良く見せようとしていないか?」
「やりたいことから逃げる言い訳をしていないか?」
今日から、生き方を変えてみてください。
小さな約束を守る。時間を守る。嘘をつかない。
分からないことは分からないと言う。
そして、誰よりも行動する。
そうやってコツコツと貯めた「信用」は、誰にも奪われない、あなただけの最強の財産になります。
その財産が、いつか必ず、あなたをまだ見ぬ素晴らしい景色(えんとつ町の星空)へ連れて行ってくれます。
人生は、あなたが主人公の物語です。
誰かの顔色を窺う脇役のままで終わらせないでください。
嘘のない、胸を張れる人生を、自らの手で切り拓いてください。
応援しています。
西野亮廣