こんにちは、石原さとみです。
「人生で一番大事なことは何ですか?」
……なんて、すごく深くて、大きくて、素敵な質問なんでしょう。
真正面からそんな風に聞いてもらえて、なんだかドキッとしたけれど、今の私が心から思っていることを、少し長くなってしまうかもしれないけれど、お手紙を書くような気持ちで綴ってみようと思います。
3500字……!ふふ、改めて文字数を聞くとすごい量ですね(笑)。でも、私の人生を振り返りながら、そして今大切にしている日々の感覚を丁寧にすくい上げながらお話ししたら、きっとそれくらいになってしまうかもしれません。お茶でも飲みながら、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
1. 「誰かの正解」を生きていた頃
私が人生で大事なことに気づく前の話、少しだけ昔話をさせてください。
10代の頃、私はものすごくラッキーなことに、このお仕事を始めさせていただきました。毎日がめまぐるしくて、たくさんの大人の方たちに囲まれて、「石原さとみ」という存在がどんどん大きくなっていく。それは本当にありがたいことだったんです。
でも、20代の前半くらいかな。私はずっと「いい子」でいようとしていました。「求められていること」に120点満点で応えることが正解だと思っていたんです。台本に書かれたセリフ、大人たちが決めた衣装、メイクさんが施してくれるお化粧。それが一番私を可愛く見せてくれるはずだし、それがプロフェッショナルだと思っていました。
けれど、心のどこかでずっと苦しかったんです。
仕事が終わって家に帰ると、ふと「私って何が好きなんだっけ?」「私って何色を着たいんだっけ?」って、自分の輪郭がぼやけていくような感覚に襲われることがありました。
他人の評価がすべての基準になっていたんですね。「褒められたら正解」「批判されたら間違い」。だから、いつも失敗するのが怖くて、正解の道を必死に探して、ビクビクしていました。もしうまくいかなかったら、それは「選んだ誰か」のせいにしてしまいたくなる自分もいて、そんな自分がまた嫌いでした。
人生で一番大事なこと。それは、あの頃の私には全く見えていなかった「自分で選ぶ」ということでした。
2. ニューヨークが教えてくれた「選択」の魔法
私の人生の大きな転機になったのは、23歳の時に行ったニューヨークへの一人旅だと、いろいろなところでお話しさせていただいています。でも、これって本当に、私の中では革命だったんです。
当時の私は、少し仕事に行き詰まりを感じていて、マネージャーさんにお願いして1ヶ月のお休みをもらいました。初めての海外一人暮らし。誰も私のことを知らない街。
そこで私は、朝起きる時間から、食べるもの、着る服、どこへ行くか、すべてを「自分」で決めなければなりませんでした。
ある古着屋さんに入って、すごく素敵な赤いセーターを見つけたんです。「わぁ、可愛い!」って心臓が跳ねました。でも、一瞬また昔の癖が出そうになったんです。「これ、似合うかな?」「日本の流行りとは違うかな?」って。
でも、その時、私は「私が可愛いと思ったから、着る」って決めて、そのセーターを買いました。それを着て街を歩いた時の、あの高揚感。
「あ、これだ」って思いました。
自分で選んだものを身につけて、自分で選んだものを食べて、自分で選んだ道を行く。もしそのセーターが誰かに「似合わない」って言われても、私が好きで選んだんだから「ふふん、私はこれが好きなの!」って胸を張れる。
その時、雷に打たれたみたいに気づいたんです。
「人生の楽しさは、選択の数で決まるんだ」って。
誰かに選んでもらった人生を生きて、もし失敗したら、その人を恨んでしまうかもしれない。でも、自分で選んだことなら、たとえ失敗しても「あちゃー、やっちゃった!」って笑えるし、それは全部私の「経験」という財産になる。
だから、私にとって人生で一番大事なことの一つ目は、「自分の意志で選び取ること」です。
メイクも、ファッションも、仕事も、生き方も。
「やらされている」ことなんて一つもない。「私がやりたくてやっている」に変えていく。そう思えた瞬間に、景色がモノクロから鮮やかなカラーに変わりました。
3. 「コンプレックス」さえも愛おしい一部
自分の意志で選び始めると、不思議と自分の「嫌いな部分」との付き合い方も変わってきました。
私、昔は自分の容姿にすごくいっぱいコンプレックスがあったんです。唇が厚いこととか、眉毛の形とか、体型とか。もっとシュッとした美人になりたいってずっと思っていました。
でも、自分でメイクを研究し始めて、自分の顔立ちを活かす方法を探求していくうちに、コンプレックスだと思っていた部分が、実は「私らしさ」を作る最強の武器になることに気づきました。
大事なのは、生まれ持ったものを否定することじゃなくて、「どう活かすか」を工夫すること。
それって、容姿だけじゃなくて、性格や人生そのものにも言えることだと思うんです。
ネガティブになりやすい性格なら、それは「リスク管理が得意で慎重」とも言えるし、飽きっぽいなら「好奇心旺盛」とも言える。
自分の持っている手札を「こんなカードいらない」って嘆くんじゃなくて、「さて、このカードを使ってどんな面白いゲームをしてやろうか」ってワクワクすること。
自分自身を、一番近くで応援してあげる「ファン」でいること。
どんなにダメな自分が出てきても、「まあ、そんな日もあるよね」「人間らしくていいじゃん」ってハグしてあげること。
この「自己受容」も、人生を幸せに生きるためのすごく大事な鍵だと感じています。
4. 変化を恐れず、変化を楽しむこと
30代に入って、結婚して、母になって。
私の人生はまた大きく変わりました。
独身の頃は、正直に言えば、仕事が恋人でした。「もっとうまくなりたい」「もっと良い作品を作りたい」という情熱が、すべて自分に向いていたんです。自分の成長が一番の喜びでした。
でも、家族ができて、守るべき小さな命が生まれた時、私の中の優先順位がガラガラと音を立てて崩れて、再構築されました。
自分のために使う時間が減ることは、以前の私なら恐怖だったかもしれません。でも今は、誰かのために自分の時間や体力を注ぐことが、こんなにも愛おしくて、尊いものなんだって知ることができました。
もちろん、育児は大変です(笑)。思い通りにいかないことの連続だし、寝不足でフラフラになる日もあります。でも、子供のふとした笑顔や、成長の一瞬一瞬に触れるたびに、「愛する」ということがどれほど人強くするのかを教えてもらっています。
人生で大事なこと。それは、「変わっていく自分を許し、楽しむこと」かもしれません。
昔の自分に固執しなくていいんです。「あの頃は良かった」なんて後ろを振り返るより、シワが増えたとしても、経験という深みが増した今の自分の方が好きだと言いたい。
環境が変われば、大事なものも変わる。その変化の波に逆らうんじゃなくて、サーフィンみたいに乗りこなしていけたら、きっとどんな未来も楽しいはずです。
5. 「今、ここ」にある幸せを味わい尽くす
いろいろ書いてきましたが、究極的に一番大事なことって何だろうって考えると、やっぱり「今、この瞬間を味わうこと」に行き着くような気がします。
私、食べることが大好きなんです(笑)。美味しいご飯を食べている時って、本当に幸せじゃないですか?
でも、もしご飯を食べながら、「明日の仕事どうしよう」とか「昨日のあの失敗、恥ずかしかったな」とか考えていたら、そのご飯の味って半減してしまいますよね。
目の前にある温かいスープの香り、口に入れた時の食感、喉を通る時の温かさ。
目の前にいる大切な人の笑顔、交わす言葉のトーン、触れた手のぬくもり。
道端に咲いている花の色、夕暮れの空のグラデーション、風の匂い。
そういう、日常の中に溢れている「小さな奇跡」みたいな瞬間を、取りこぼさずにキャッチすること。
「美味しいな」「綺麗だな」「嬉しいな」「ありがとう」
そう心で感じて、ちゃんと言葉にすること。
未来のために今を犠牲にするんじゃなくて、今の積み重ねが未来を作るんだと信じること。
だって、私たちは「今」しか生きられない生き物だから。
忙しいとつい忘れがちになってしまうけれど、丁寧に生活すること、自分の機嫌を自分でとること、ちゃんと寝て、ちゃんと食べて、肌の調子を整えること。そういう基本的な「生活」を疎かにしないことが、結局は一番、自分を幸せにしてくれる気がします。
最後に
長々と書いてしまいましたが、私が思う「人生で一番大事なこと」。
それは一言で言うなら、「自分の心に嘘をつかないこと」です。
自分の「好き」という気持ち、
「やりたい」という衝動、
「心地いい」という感覚。
それらに正直に生きること。
誰かのためじゃなく、まずは自分が心から笑っていること。
私が笑っていれば、周りの人もきっと明るくなる。
そうやって、幸せの連鎖を作っていくこと。
もし今、あなたが何かに迷っていたり、苦しい思いをしていたりするとしたら、どうか思い出してほしいんです。
あなたは、あなたの人生の主人公であり、脚本家であり、演出家です。
いつからだって、どんな風にだって、ストーリーは書き換えられます。
正解なんてどこにもない。
あなたが選んだその道が、いつか「正解だった」と笑える日が来るように、今この瞬間を精一杯、楽しんで生きていきましょう。
私も、まだまだ迷ったり悩んだりする途中です。
でも、だからこそ人生は面白いんですよね。
一緒に、この一度きりの人生という旅を、思いっきり楽しみましょうね!
最後まで読んでくれて、本当にありがとうございました。
あなたの毎日が、たくさんの「トキメキ」と「笑顔」で溢れますように。
心を込めて。
石原さとみ