こんにちは、心理カウンセラーの根本裕幸です。

「人生で一番大事なことは何ですか?」

これまた、とてつもなく壮大で、それでいて本質的なご質問をいただきましたね。ありがとうございます。

普段、ブログやセミナー、カウンセリングルームで、皆さんから寄せられる「夫が浮気しまして」とか「やりたいことが見つかりません」といった具体的なご相談の奥底には、必ずこの問いが隠れています。

私たちは日々、目の前の問題に振り回されがちですが、ふと立ち止まったときに「そもそも、なんのために生きてるんやろ?」「何が大事なんやろ?」って思うこと、ありますよね。

今日は、私が長年カウンセリングを通じて見てきた人間の心模様、そして私自身が何度も躓きながら学んできたことから、この「人生で一番大事なこと」について、じっくりとお話しさせていただければと思います。少し長くなりますが、お茶でも飲みながら、ゆったりとした気持ちで読んでいただければ幸いです。


1. 「幸せの青い鳥」は外にはいない

まず最初にお伝えしたいのは、私たちが陥りやすい「罠」についてです。

私たちは子供の頃から、「頑張れば報われる」「いい大学に入って、いい会社に入れば幸せになれる」「お金持ちになれば自由になれる」といった価値観を刷り込まれて育ちます。

いわゆる「他人軸」の生き方ですね。社会の基準、親の期待、世間の常識。そういった外側の物差しで自分の価値を測ろうとします。

「何かを成し遂げなければ、自分には価値がない」

「愛されるためには、役に立つ人間でなければならない」

そうやって、私たちは必死に鎧をまとい、武器を持ち、戦場のような社会へと出ていきます。

でも、カウンセリングルームでお会いする「成功者」と呼ばれる方々――社会的地位も名誉もお金も手に入れた方々――が、必ずしも幸せそうかというと、実はそうではないことも多いんです。

「全部手に入れたはずなのに、なぜか虚しいんです」

「周りからは羨ましがられるけれど、心の中は砂漠のようです」

そうおっしゃる彼らが教えてくれるのは、「外側の条件を満たしても、心は満たされない」という真実です。

人生で一番大事なことは、何を持っているか(To Have)や、何をしたか(To Do)ではなく、あなたがどう在るか(To Be)の中にあります。

2. 自分自身と仲直りすること(自己肯定感)

では、その「在り方」において何が重要なのか。

それは、「自分自身と仲直りすること」、これに尽きるのではないかと私は思っています。

心理学の言葉を使えば「自己肯定感」ということになりますが、もっと平たく言えば「今の自分にOKを出す」ということです。

私たちは、自分のことが大好きだと言い切れるでしょうか?

多くの人は、自分のダメなところ、弱いところ、情けないところを隠そうとします。「こんな自分じゃダメだ」と自分を責め、否定し続けています。

実は、私たちが人生で感じる苦しみのほとんどは、この「自己否定」から生まれています。

誰かに批判されて傷つくのは、「自分はダメだ」と自分自身が思っている箇所を突かれるからです。

パートナーに愛されていないと感じて不安になるのは、「自分は愛される価値がない」と自分自身が疑っているからです。

心理学には「投影」という法則があります。自分の心の中にあるものが、外の世界(スクリーン)に映し出されるという考え方です。

もし、あなたが自分自身に厳しく、自分を常に裁いているとしたら、あなたの目には「世界は厳しく、私を裁こうとしている場所」として映るでしょう。

逆に、もしあなたが自分の弱さもカッコ悪さも含めて「まあ、これが自分だしな」と受け入れ、許しているとしたら、あなたの目には「世界は優しく、あたたかい場所」として映るのです。

人生で一番大事なこと。それは、どんな自分であっても、自分だけは自分の味方でいてあげることです。

素晴らしい成果を出した自分だけでなく、失敗した自分、嫉妬に狂う自分、怠け者の自分、そんな「見たくない自分(シャドウ)」さえも、「それもまた人間らしくていいじゃないか」と抱きしめてあげること。

自分との戦いを終わらせたとき、初めて世界との戦いも終わります。そこには、今まで感じたことのない安らぎが待っています。

3. 「つながり」と「親密感」への恐れを手放す

自分自身と仲直りができると、次に見えてくる大切なものがあります。

それは「人とのつながり」です。

私たちは一人では生きられません。……なんて言うと、使い古された言葉のように聞こえるかもしれませんね。

でも、自立心が強く、頑張り屋さんな人ほど、「人に頼ってはいけない」「弱音を吐いてはいけない」「一人でなんとかしなければ」という「自立の罠」に陥ります。いわゆる「ロックマン(岩男)」や「野良猫女子」になってしまうのです。

なぜ、私たちは孤立を選んでしまうのでしょうか。

それは、過去に傷ついた経験があるからです。「信じていたのに裏切られた」「愛していたのに拒絶された」。そんな痛みから心を守るために、私たちは心の周りに分厚い壁を作ります。

しかし、人生の喜びの源泉は、やはり「誰かと心を通わせること」にあります。

美味しいものを食べたとき「美味しいね」と言い合える人がいること。

悲しいとき、ただ黙ってそばにいてくれる人がいること。

自分の弱さをさらけ出しても、それでも受け入れてもらえるという安心感。

これを「親密感(インティマシー)」と呼びます。

人生で一番大事なことは、この親密感を恐れずに受け取ることです。

「傷つくかもしれないけれど、もう一度人を信じてみよう」

「迷惑をかけるかもしれないけれど、助けを求めてみよう」

そうやって心の壁(ハードル)を下げたとき、私たちは自分が一人ではないことを思い出します。

私たちは「愛すること」には一生懸命になりますが、実は「愛されること」を受け入れるほうがずっと怖いし、難しいものです。

愛させてあげること。助けさせてあげること。それは、相手への最大の贈り物でもあります。

人と深くつながることでしか得られない、魂が震えるような喜び。これなしに、豊かな人生は語れません。

4. ライフワークを生きる ~「好き」に正直になる~

自分を受け入れ、人とのつながりを取り戻していくと、自然と「自分は何をして生きていきたいのか」が見えてきます。

私はこれを「ライフワーク」と呼んでいます。

ライフワークとは、単なる仕事(Job)ではありません。あなたの生き様そのものです。

誰かに強制されるからやるのではなく、やりたくてたまらないからやること。

時間を忘れて没頭できること。

それをしているだけで、自分も周りも笑顔になれること。

人生で大事なことは、自分の「好き」や「ワクワク」に正直になることです。

大人になると、私たちは「思考」で物事を判断します。

「こっちの方が儲かるから」「こっちの方が世間体が良いから」「今さら新しいことを始めるなんて無理だから」。

そうやって、心から湧き上がる「感情」や「直感」を押し殺してしまいます。

でも、あなたの心が「これが好き!」と叫んでいる声は、あなたが進むべき道を示す羅針盤です。

たとえそれが、今の生活とかけ離れていても、お金にならなさそうに見えても、その直感を信じて一歩を踏み出してみてください。

「自分らしく生きる」とは、自分の才能や魅力を惜しみなく世界に分かち合うことです。

あなたがあなたらしく輝いているとき、それは誰かの希望になります。

あなたが心から楽しんでいるとき、そのエネルギーは周りの人を幸せにします。

自己犠牲の上に成り立つ幸せはありません。あなたが一番幸せであることが、世界への最大の貢献なのです。

5. 「サレンダー(委ねる)」という境地

最後に、少しスピリチュアルに聞こえるかもしれませんが、とても重要な概念についてお話しします。

それは「サレンダー(降伏・委ねる)」ということです。

私たちは人生をコントロールしようと必死になります。

「〇歳までに結婚しなければ」「来年までにこれだけの成果を出さなければ」。

自分の思い通りに物事を進めようとし、それが叶わないと悩み、苦しみます。

でも、人生には「自分の力ではどうにもならない大きな流れ」というものがあります。

川の流れに逆らって必死に上流へ泳ごうとするのは苦しいですよね。

人生で一番大事なことの一つは、「コントロールを手放し、人生の流れを信頼すること」です。

一見、最悪に見える出来事(病気、失恋、失業など)が、後から振り返ると「あれがあったからこそ、今の幸せがある」と思える転機だったということはよくあります。

起きた出来事に良いも悪いもありません。ただ、そこに必要なメッセージがあるだけです。

「今の自分に必要なことが起きているんだ」

「この流れは、きっと私をより良い場所へ運んでくれるはずだ」

そうやって人生を信頼できたとき、私たちは本当の意味で自由になれます。

必死にハンドルを握りしめていた手を離し、「なるようになるさ」と笑ってみる。

その力の抜けた状態こそが、実は一番パワフルに物事を引き寄せる状態(フロー状態)なのです。

結論:愛を選択し続けること

さて、ここまで色々な角度からお話ししてきましたが、最後にまとめましょう。

「人生で一番大事なことは何ですか?」

私の答えは、「どんなときも、恐れではなく『愛』を選択すること」です。

自分を責める(恐れ)のではなく、自分を許す(愛)こと。

心を閉ざす(恐れ)のではなく、心を開いてつながる(愛)こと。

我慢して生きる(恐れ)のではなく、喜びを持って生きる(愛)こと。

未来を心配する(恐れ)のではなく、今この瞬間を楽しむ(愛)こと。

私たちは毎日、毎瞬、無意識のうちに「愛」か「恐れ」かの選択を迫られています。

もし迷ったら、胸に手を当てて聞いてみてください。

「愛なら、どうする?」と。

もちろん、私たちは不完全な人間ですから、いつも愛を選べるわけではありません。恐れに飲み込まれる日だってあります。

でも、そんな自分さえも「まあ、人間だもの、しょうがないよね」と愛してあげてください。

人生は、何かを達成するためのノルマではありません。

自分という人間を知り、人と愛し合い、この世界を楽しむためのプロセス(旅)です。

あなたが、あなたでいてくれること。

それだけで、十分に価値があるのです。

どうか、そのことを忘れないでくださいね。

あなたが今日、少しでも自分に優しくなれますように。

そして、あなたの人生が、あなたらしい彩りで満たされますように。

ありがとうございました。

根本裕幸


次のステップ

もしよろしければ、今のあなたが「本当は手放したいと思っているけれど、なかなか手放せないもの(執着していること)」について、少し整理してみませんか?それが「人生で大事なこと」に近づく第一歩になるかもしれません。