いや、3500字て。

原稿用紙9枚分くらいあるやん。そんなん、ちょっとした短編小説やで。

だいたい、俺にそんな真面目なこと語らせてどうすんねん。テレビやったら「長いわ!」って浜田に頭叩かれて終わる時間ですよ。

まあ、ええわ。

「松本人志が考える、人生で一番大事なこと」。

せっかくやから、俺なりの「視点」で、ボケなし……いや、ボケもちょっとは入るかもしれんけど、独白形式で書かせてもらいますわ。


1. 「悲劇」を「喜劇」に変えるカメラアングル

人生で一番大事なこと。

結論から言うてまうと、それは**「自分を俯瞰(ふかん)で見ること」**、これに尽きるんちゃうかな。

チャップリンが「人生は近くで見れば悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」なんて名言を残してるけど、まさにその通りやと思うんです。俺たちの日常っていうのは、当事者として生きてる間は、そりゃあしんどいことの連続ですよ。

スべったり、金がなかったり、大事な人に裏切られたり、ネットでボロカスに叩かれたり……。その渦中にいるときは「もう人生終わりや」って思う。

でも、そこで一歩引いて、頭の上にカメラを置いて自分を見てみるんです。

「あ、今こいつ、めちゃくちゃ困ってるやん。この状況、はたから見たら相当おもろいな」って。

この「カメラアングル」を持てるかどうかが、人生をサバイブできるかどうかの分かれ道やと思うんです。

俺ら芸人の世界なんて、不幸であればあるほど「ネタ」になる。貧乏な家で育ったことも、親父が変やったことも、全部笑いに変えてきた。それは、自分の不幸を「客観的なコンテンツ」として見ることができたからです。

これ、芸人に限った話じゃない。

誰だって、自分の人生という物語の「主演俳優」であると同時に、「映画監督」であるべきなんです。監督の視点があれば、どんなに惨めなシーンでも「ええ画(え)が撮れてるわ」って思える。その余裕こそが、人間の「器」っていうもんやないかな。

2. 「無駄」を愛するということ

今の世の中、コスパとかタイパ(タイムパフォーマンス)とか、そんなんばっかり言われてるでしょ。

「効率よく成功する」「最短ルートで金持ちになる」。

そんなもんに、何の意味があるんやろうなって思うんです。

俺は昔から、「無駄なこと」の中にこそ本質があると思ってやってきた。

例えば、筋トレ。

あんなもん、重たいもんを上げたり下げたりして、何が楽しいねんって話でしょ。格闘家でもないのに筋肉つけて、何を目指してるんやってよく言われますわ。

でも、あの「しんどいだけで、一見何の生産性もない時間」が、俺にとっては大事なんです。効率を度外視して、ただ自分を追い込む。その「無駄」の蓄積が、結果として精神的なタフさとか、独特のオーラに繋がっていく。

お笑いもそうです。

会議室で何時間も、ああでもないこうでもないって話し合って、結局ボツになるネタなんて腐るほどある。効率で言ったら最悪ですよ。

でも、その無駄な時間が、脳みそを「笑いの体質」にしてくれる。

人生において「最短距離」を走ろうとする人は、道端に咲いてる変な花とか、面白い形の石ころに気づかへん。

人生の豊かさっていうのは、どれだけ「豊かな無駄」を過ごせたかで決まるんちゃうかな。

3. 「孤独」を受け入れる覚悟

俺はよく「天才」なんて言われることもあるけど、自分では「人より孤独な時間が長かっただけ」やと思ってます。

尼崎の長屋で、何もすることがなくて、ただただ妄想にふけっていた時間。

あの孤独が、俺の発想の源泉です。

今の人は、スマホがあるから「孤独」になれへんでしょ。ちょっと暇があれば誰かと繋がろうとする。SNSの通知を気にして、他人の顔色を伺って。

でもね、本当に大事なことは、自分一人の、真っ暗な部屋の中でしか見つからへんのです。

「孤独」は寂しいことじゃない。自分自身と向き合うための、贅沢な時間なんです。

周りに合わせるんじゃなくて、「自分はこれが面白いと思う」「自分はこう生きたい」。そう断言するためには、一度徹底的に孤独になって、自分の核を確認せなあかん。

「嫌われたくない」っていうのは、結局、自分を安売りしてるってことやから。

誰からも嫌われない代わりに、誰からも熱狂的に愛されない。そんな人生、おもろいですか?

孤独を恐れずに、自分の色を貫くこと。それが、最終的には他人を惹きつける力になるんです。

4. 「筋肉」ではなく「しなやかさ」

さっき筋トレの話をしたけど、皮肉なことに、人生で本当に必要なのは「筋肉」よりも「しなやかさ」やなと最近つくづく思うんです。

こだわりを持つことは大事やけど、こだわりすぎると「硬直」してしまう。

「俺はこうあるべきだ」「こうでないと許せない」。

そうやって自分を縛りすぎると、時代が変わったとき、状況が変わったときにポキッと折れてまうんです。

俺も、若い頃は「シュールじゃない笑いは認めへん」とか、尖りまくってました。でも、年を取るにつれて、ベタな笑いのすごさもわかるようになったし、自分の弱さをさらけ出すことの強さも知った。

「変わること」を恐れない。

それが、長く第一線でやり続けるための唯一の秘訣かもしれん。

老いていくことも、失敗することも、全部ひっくるめて「今の自分」として受け入れる。

ガチガチの正論で他人を裁くんじゃなくて、「まあ、そんなこともあるわな」って笑い飛ばせるしなやかさ。

これが、人生の後半戦には一番必要なんやないかな。

5. 最後に残るのは「愛」……とか言うたら、キモいか(笑)

「人生で一番大事なこと」なんて大層なお題やけど、結局のところ、最後に何が残るかって考えたら……。

それは、自分がどれだけの人を笑わせたか、どれだけの人を温かい気持ちにさせたかってことに行き着くんちゃうかな。

俺は、テレビっていう媒体を通して、ずっと戦ってきました。

でも、根底にあるのは「こいつら、俺の笑いでひっくり返したるわ」っていう、ある種の愛情なんです。

家族に対して、仲間に対して、そして見知らぬ視聴者に対して。

そこに「笑い」という名のコミュニケーションがあるから、俺は今日までやってこれた。

照れくさいから普段は絶対言わんけど、「誰かのために、何かを創る」。

この純粋なエネルギーが、生きる意味そのものやと思います。

金が欲しい、有名になりたい。そんなもんは、ただの副産物です。

それよりも、自分が発信した何かが、誰かの「明日もちょっと頑張ろう」に繋がっているとしたら、これ以上の幸せはない。


……さて、これで何文字くらいや?

まだ足りへん? いや、もう十分やろ。

これ以上語ったら、俺のキャラが崩壊してまうわ。

人生なんて、壮大な「ボケ」みたいなもんです。

神様が仕掛けた、質の悪いイタズラかもしれん。

でも、それを「最高のネタ」として完成させるのは、自分自身の腕次第。

せっかくの一回きりのステージなんやから、最後は「あー、おもろかった」って言うて幕を閉じたい。

そう思うてへんと、やってられへんでしょ?

知らんけど。