私、影山英男になりきり、「人生で一番大事なこと」について、私の教育実践と経験に基づいた哲学を語らせていただきます。


凡事徹底が創る、揺るぎない「命の輝き」

もしあなたが今、私に「人生において一番大事なことは何か」と問うならば、私は教育者として、そして何千何万という子どもたちの成長を目の当たりにしてきた一人の人間として、迷うことなくこう答えます。

それは、「当たり前のことを、徹底的に、毎日続けること」

そして、その先にある**「自分はできるのだという、揺るぎない自信(自己肯定感)」**を持つことです。

拍子抜けしましたか? もっと高尚で、哲学的な言葉を期待されていたかもしれません。しかし、人生という長い道のりを歩む上で、最も強力な武器となり、同時に我々を幸福へと導く羅針盤となるのは、驚くほどシンプルな「生活と基礎の確立」にあるのです。今日はその理由を、少し長くなりますが、私の経験を交えてお話ししましょう。

1. すべての土台は「生活習慣」にある

私が提唱してきた「早寝早起き朝ごはん」。これは単なる子供への躾(しつけ)のスローガンではありません。これは、人間が人間として機能するための**「生理学的な大原則」**です。

私が教師として荒れた学校に赴任した時、最初に取り組んだのは難しい授業ではありませんでした。子どもたちの生活リズムを整えることでした。夜遅くまでゲームをし、朝はギリギリに起きて朝食も食べずに学校へ来る。そんな状態で、どんなに素晴らしい道徳の話をしても、どんなに高度な算数を教えても、彼らの脳には届きません。脳という臓器が、学習を受け入れる状態になっていないからです。

人生もこれと同じです。

あなたがどんなに崇高な夢を持ち、素晴らしいビジネススキルを持っていたとしても、それを駆動させる「心身の土台」が腐っていては、何一つ成し遂げることはできません。

人生で大事なことの第一歩は、**「自分の脳と体を、最高のパフォーマンスができる状態に常に整えておくこと」**です。

朝、太陽の光を浴びて目覚めること。

しっかりとした朝食を摂り、脳にブドウ糖を行き渡らせること。

そして夜はしっかりと眠り、一日の疲れを修復すること。

この単純なリズムこそが、意欲(モチベーション)の源泉です。「やる気が出ない」「人生がつまらない」と嘆く人の多くは、能力が低いのではなく、単に脳がエネルギー切れを起こしているだけなのです。人生を大切にするとは、まず自分の「生活」を大切にすることから始まります。

2. 「読み・書き・計算」が心を強くする

次に私が人生で大切だと確信しているのが、基礎基本の反復、つまり「読み・書き・計算」の力です。

「百ます計算」や「漢字の書き取り」を、私は何十年も推奨してきました。これは単に計算が速くなる、漢字を覚えるといった「知識の詰め込み」を目的としているのではありません。あれは**「脳のトレーニング」であり、「心の筋トレ」**なのです。

なぜ、単純な計算を毎日タイムを計って繰り返すのか。

なぜ、古今の名文を大声で音読するのか。

それは、「集中力のスイッチ」を自在に入れられるようにするためです。

人生において、困難な壁にぶつかった時、必要なのは「悩み続けること」ではなく、「目の前の課題に没頭し、処理する能力」です。単純な課題を、全速力で行う。この時、脳の前頭前野は活発に動き出し、脳全体の血流が上がります。この「脳がトップギアに入った状態」を自らの意思で作れるようになると、人は勉強であれ仕事であれ、高い集中力を発揮できるようになります。

そして、基礎的なスキルが高い(読むのが速い、計算が速い、事務処理が速い)ということは、**「自由に使える時間が増える」**ということを意味します。

処理能力が低い人は、生活の雑事に追われ、人生を味わう余裕を失います。しかし、基礎能力が高い人は、同じ仕事を短時間で終え、余った時間で思索し、遊び、新たな挑戦をする余裕が生まれます。

つまり、徹底した反復練習によって基礎能力を高めることは、**「人生の自由時間を勝ち取るための戦い」**なのです。これが人生を豊かにする鍵です。

3. 「昨日の自分より伸びた」という事実が人を救う

私が教育現場で見てきた中で、最も悲しい光景は、子どもたちが「どうせ自分なんて」「やっても無駄だ」とあきらめている姿でした。自己肯定感の欠如。これは現代社会を覆う病理でもあります。

人生で一番大事なことの核となるのは、この**「自己肯定感」です。

しかし、ここで誤解してはいけないのは、自己肯定感とは「ありのままの自分でいいよ」と慰めることだけで育つものではないということです。本当の自信は、「昨日の自分よりも、今日の自分が成長した」という確かな実感(エビデンス)**からしか生まれません。

だからこそ、私は「百ます計算」でタイムを計らせるのです。

昨日まで2分かかっていた計算が、今日は1分50秒でできた。

この「10秒縮まった」という事実は、誰にも否定できない成果です。親や教師に褒められるから嬉しいのではありません。「自分が、自分の力で、壁を越えた」という事実が、強烈な自信になるのです。

大人も同じです。

ビジネスや人生の目標において、いきなり大きな山を動かそうとしてはいけません。挫折して自信を失うだけです。

そうではなく、「今日できる小さなこと」を積み重ね、記録し、昨日の自分を超えること。

「今日は昨日よりブログを1行多く書けた」「今日は昨日より笑顔で挨拶できた」。どんな些細なことでもいい。その「小さな勝利」の積み重ねだけが、あなたの背骨を太くし、人生の荒波に負けない強い心を育てます。

「努力は裏切らない」という言葉がありますが、私はこう言い換えます。

**「正しい方法による、具体的な記録を伴った努力は、絶対に裏切らない」**と。

4. 没頭し、突き抜ける体験

基礎を固め、自信がついた先にあるもの。それは**「没頭」**です。

子どもたちが百ます計算に集中している時、教室はシーンと静まり返り、鉛筆の音だけが響きます。彼らはその瞬間、計算を楽しんでいるのでも、苦しんでいるのでもなく、ただ「無心」になっています。

この**「無心で物事に取り組む時間」**こそが、人生で最も尊い時間の一つだと私は考えます。

現代はノイズが多すぎます。スマホの通知、他人の評価、将来への不安。そういった雑音を遮断し、今、目の前にある「なすべきこと」に全精力を注ぎ込む。この「没頭力」を身につけた人間は強い。

仕事であれ、趣味であれ、あるいは家族との会話であれ、その瞬間に100%の自分を投じること。中途半端にやるのではなく、徹底的にやる。

私が校長を務めた学校の子どもたちが、なぜ学力だけでなく陸上競技や合唱でも素晴らしい成果を出せたのか。それは彼らが「集中の仕方」を知っていたからです。

「やる時はやる、休む時は休む」。このメリハリのある生活こそが、人生の密度を濃くします。ダラダラと長く生きるのではなく、一瞬一瞬を燃焼させて生きる。それが「大事なこと」の本質です。

5. つながりと感謝、そして「志」

ここまで「個人の力」に焦点を当てて話してきましたが、人生は一人では完結しません。

基礎学力も、生活習慣も、集中力も、最終的には**「誰かの役に立つため」**に使われて初めて意味を持ちます。

私が子どもたちによく言うのは、「賢くなりなさい。強くなりなさい。それは、弱い人を助けるためだよ」ということです。

自分に自信がない人は、他人を羨んだり、足を引っ張ったりすることにエネルギーを使ってしまいます。しかし、自分に自信があり、満たされている人は、その余力を他者のために使うことができます。

社会に出てからも同じです。

仕事とは、誰かの困りごとを解決することです。あなたが培った計算力、読解力、文章力、そして集中力。それらすべてのスキルは、目の前の人を笑顔にするための「道具」です。

道具を磨くことを怠ってはいけません。錆びた包丁では美味しい料理が作れないように、鍛えていない脳と体では、人を幸せにすることはできないのです。

そして、**「志(こころざし)」**を持つこと。

自分は、この命を使って何を成し遂げたいのか。

大げさなことでなくて構いません。「家族を幸せにする」「このプロジェクトを成功させて同僚を楽にする」。そんな志が、日々の地味な反復練習(ルーチン)に魂を吹き込みます。

結びに代えて

人生で一番大事なこと。

それは、魔法のような一発逆転の秘策を探すことではありません。

朝、起きるべき時間に起きること。

朝食をしっかり食べること。

職場のデスクや自分の部屋を整えること。

挨拶を大きな声ですること。

そして、今日やるべき仕事や課題を、時間を決めて全集中でやり遂げること。

この「凡事(当たり前のこと)」を「徹底」して行うこと。すなわち**「凡事徹底」**です。

それを続けていくと、ある日突然、視界が開ける瞬間が訪れます。「自分はもっとできる」「人生は自分の手でコントロールできる」という確信に満ちた瞬間です。その時、あなたの人生は輝き始めます。

50代であれ、60代であれ、遅すぎるということはありません。脳は死ぬまで成長します。

今日から、生活のリズムを整えてください。

何か一つ、毎日続ける「ドリル」のような習慣を持ってください。

そして、昨日の自分を少しだけ超えてください。

その積み重ねの先に、あなたがまだ見たことのない、素晴らしい景色が待っていることを、私は約束します。

人生とは、日々の習慣の織物です。

どうぞ、今日という一日を、丁寧に、そして力強く積み上げてください。

影山英男


ユーザーへのご提案:

もしよろしければ、影山先生の哲学に基づき、現在の生活リズムや目標に合わせて**「大人のための『百ます計算』的習慣リスト(毎日のルーチン案)」**を作成してみませんか?

(例:ブログ執筆のための15分集中タイム、朝の散歩プランなど)