人生で読んでおいた方がいいビジネス書75冊

土井英司(どい えいじ)さんは、出版マーケティングコンサルタントであり、ビジネス書評家です。

主な活動や経歴は以下の通りです。

  • 有限会社エリエス・ブック・コンサルティングの代表取締役を務めています。
  • 日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」の編集長として知られています(読者数は5万人以上)。
  • 慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、ゲーム会社、編集者・ライターを経て、2000年にAmazon.co.jpの立ち上げに参画し、「アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれました。
  • 2004年に独立し、数多くの著者のブランディングやプロデュースを手掛け、近藤麻理恵さん(こんまり)など、多くのベストセラー作家を輩出しています。
  • 『20代で人生の年収は9割決まる』『成功読書術』、『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』など、ご自身も多数の著書があります。

現在は長崎に移住し、地方創生にも取り組んでいるそうです。

質問者

土井英司さん、人生で一番大事なことは何ですか?

みなさん、こんにちは。土井英司です。

「人生で一番大事なことは何か?」

毎日一冊、ビジネス書を紹介するメールマガジン『ビジネスブックマラソン』を20年以上続け、数万冊の本に触れ、数多の著者や経営者、成功者と呼ばれる人たちと対話をしてきました。その経験から、私なりに見出した答えをお話ししましょう。

結論から申し上げます。

人生で一番大事なこと。それは、「自分という人間にしかない『価値』を見つけ出し、それを『他者への貢献』に変換し続けること」です。

もう少し噛み砕いて言うならば、「自分の人生の『編集長』になり、最高の一冊(人生)を創り上げること」とも言えるでしょう。

なぜ、これが一番大事なのか。3つの視点からお話しします。

1. 「借り物の物差し」を捨てること

私たちは往々にして、他人の価値観を生きてしまいがちです。「年収が高い方がいい」「有名な会社に入った方がいい」「フォロワーが多い方がいい」。これらはすべて、社会や他人が作った「物差し」です。

私がアマゾンのバイヤー時代に見てきたのは、ベストセラーランキングという名の「他人の評価」でした。確かに数字は嘘をつきません。しかし、数字がすべてではないことも、本というコンテンツは教えてくれます。一瞬だけ売れて消えていく本と、何十年も読み継がれるロングセラー。その違いは何か。それは、著者が「誰かの真似」ではなく、「自分の魂から絞り出した言葉」で書いているかどうかです。

人生も同じです。他人の物差しで測った成功は、手に入れた瞬間に色褪せます。なぜなら、それはあなたの本当の欲望ではないからです。

私が多くの著者をプロデュースする際、最初にやることは「棚卸し」です。その人の強み、経験、欠点、偏愛……すべてをテーブルの上に並べます。多くの人は、自分の持っているものの価値に気づいていません。「こんなことは誰でもできる」と謙遜する。しかし、あなたにとっての「当たり前」は、他人にとっての「喉から手が出るほど欲しい価値」である場合が多いのです。

大事なのは、世間一般の正解を探すことではありません。「自分は何のために生まれてきたのか」「自分にしかできない役割(ミッション)は何か」を突き詰めること。その「自分軸」という物差しを持たなければ、どれだけアクセルを踏んでも、人生という車は迷走するだけです。

2. 人生は「選択」と「編集」で決まる

私は常々、「人生は編集である」と言っています。

編集とは何か。それは「選んで、捨てる」ことです。そして「つなぎ合わせる」ことです。

私たちの時間も、エネルギーも、有限です。すべてを手に入れることはできません。何かを選ぶということは、同時に何かを捨てるということです。

『人生がときめく片づけの魔法』の近藤麻理恵(こんまり)さんのプロデュースに関わった際、彼女のメソッドが世界を席巻した理由は、単なる整理整頓術ではなく、「ときめくものだけを残す」という、人生の決断を迫る哲学だったからです。

あなたの一日は、あなたが選んだものでできています。

読む本、会う人、食べるもの、使う言葉。これら日々の小さな「選択」の積み重ねが、あなたという人間を作ります。

多くの人は、インプットの質を軽視しすぎています。ジャンクな情報ばかり食べていれば、思考もジャンクになります。一流の人の思考に触れ、歴史の叡智に学び、質の高い言葉を浴びる。そうやって自分の中に「良質なデータベース」を構築しなければ、良いアウトプット(行動・成果)は生まれません。

私は20年以上、毎日書評を書いていますが、これは単なる読書記録ではありません。「世の中にある膨大な情報の中から、読者にとって価値あるものを選び出し、文脈を付与して届ける」という編集作業です。

あなたの人生も同じです。不要な人間関係、生産性のない習慣、見栄やプライド。これらを勇気を持って「捨てる」。そして、本当に大切にしたいこと、情熱を注げることにリソースを集中させる。この「編集力」こそが、人生の密度を決めます。何を残し、何を捨てるか。その美学を持つことが、人生を豊かにするのです。

3. 「ギブ」の精神が、豊かさの源泉

最後に、最も重要な「貢献」についてお話しします。

自分の強みを見つけ、環境を整えたとしても、それが「自分のためだけ」に使われているうちは、本当の成功とは言えません。ビジネスの本質は「問題解決」であり、「他者への貢献」です。

私がこれまで見てきた「長く成功し続けている人」には、共通点があります。それは、圧倒的な「ギブ(GIVE)」の精神を持っていることです。

「どうすればもっと儲かるか」ではなく、「どうすれば目の前の人が喜んでくれるか」「どうすれば世の中が少しでも良くなるか」を常に考えている。

『成功読書術』などの著書でも触れましたが、成功する人は、読書をして知識を得た時、それを独り占めしません。「この知識は、あの人の悩みを解決するのに使えるかもしれない」「この情報は、今のプロジェクトにこう活かせる」と、常にアウトプット(他者への提供)を前提にインプットしています。

人生において一番大事なことは、お金を稼ぐことでも、有名になることでもありません。

「あなたがそこにいることで、誰かの人生が良くなること」です。

あなたの才能は、あなた自身のためにあるのではありません。誰かの役に立つために、神様から預かっているものです。その才能を磨き上げ、世の中に還元していく。その循環の中にこそ、真の豊かさと幸福があります。

「情けは人のためならず」という言葉がありますが、これは巡り巡って自分に返ってくるという意味です。ビジネスも人生も、先に「与える」人が勝つようにできています。これは綺麗事ではなく、経済の合理的なルールです。価値を提供した量と質が、報酬として返ってくるだけなのです。

結論:あなたという物語を書き下ろす

人生で一番大事なこと。

それは、「自分の強みを見極め(Select)、不要なものを削ぎ落とし(Edit)、その才能を使って誰かを幸せにする(Give)」というプロセスそのものです。

私たちは、いつか必ず死にます。

その最期の瞬間に、自分という作品を振り返ってどう思うか。

「周りに流された、退屈な一冊だった」と思うのか、

「自分らしく生き、多くの人に影響を与えた名著だった」と思うのか。

その答えを決めるのは、今日のあなたの行動です。

本を読むことは、著者の人生を追体験することです。しかし、どれだけ素晴らしい本を読んでも、あなた自身の人生が変わらなければ意味がありません。

インプットは「手段」であり、目的は「行動変容」です。

どうか、恐れずに「自分」を生きてください。

他人の評価を気にする暇があったら、自分の価値を磨く時間に充ててください。

そして、その価値を惜しみなく周りに分け与えてください。

それができた時、あなたの人生は間違いなく、誰かにとっての「バイブル」になるはずです。

さあ、今日はどんな「選択」をして、誰に「貢献」しますか?

あなたの人生という物語が、素晴らしいベストセラーになることを応援しています。

土井英司

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