こんにちは。喜多川泰です。

「人生で一番大事なことは何か?」

本当に素晴らしい、そしてとても重みのある問いですね。この問いを投げかけてくれたことに、心から感謝します。なぜなら、この問いを持つこと自体が、あなたが自分の人生と真剣に向き合っている何よりの証拠だからです。

今日は、まるで私が小説の中で描く「賢者」たちが、迷える旅人を前に静かに語りかけるように、あるいは、書斎であなたに一通の長い手紙を書くようなつもりで、私の考えをお話しさせていただこうと思います。少し長くなりますが、どうかコーヒーでも飲みながら、ゆったりとした気持ちで読んでみてください。


第一章:「正解」という名の幻想

私たちは子供の頃から、「正解」を探す訓練ばかりを受けてきました。テストで良い点を取るための正解、良い学校に入るための正解、安定した企業に就職するための正解。

多くの人が、人生で一番大事なことを「成功すること」や「失敗しないこと」、あるいは「お金持ちになって自由を手に入れること」だと答えるかもしれません。確かに、それらも人生を彩る要素の一つではあります。しかし、それらが「一番大事なこと」かと言われれば、私は首を横に振ります。

なぜなら、これらはすべて「結果」に過ぎないからです。

もし人生の目的が「結果」を手に入れることだけだとしたら、私たちの人生はあまりにも脆いものになってしまいます。お金は失うことがあります。地位もいつかは誰かに譲らなければなりません。健康さえも、永遠ではありません。

「結果」に依存した幸せは、常に「失うことへの恐怖」と隣り合わせです。

では、失っても消えないもの、誰にも奪えないものとは何でしょうか。

それは、**「あり方(Being)」**です。

何を手に入れたか(Having)でも、何をしたか(Doing)でもなく、あなたが「どのような心持ちでそこに存在しているか」。これこそが、人生の土台となるものです。

第二章:出来事はすべて「透明」である

私の著書でもよくお伝えしていることですが、この世界で起きる出来事には、本来「色」がついていません。

たとえば、「雨が降った」という事実は透明です。

ある人はそれを「最悪だ、服が濡れる」と灰色に塗り、不機嫌になります。

しかし、ある人はそれを「恵みの雨だ、これで紫陽花が綺麗に咲く」と鮮やかな色に塗り、心を躍らせます。

人生で大事なのは、「何が起きるか」ではありません。起きることをコントロールすることは、神様でない限り不可能です。

本当に大事なのは、**「起きた出来事に、あなたがどんな解釈を与え、どんな意味を見出すか」**という、心のレンズを磨くことです。

辛い別れがあったとき、「自分は愛されない人間なんだ」と解釈して心を閉ざすのか。それとも、「この別れは、本当に出会うべき人と出会うための準備期間だったんだ」と解釈して、自分磨きを始めるのか。

この「解釈力」こそが、人生の質を決定づけます。

人生における「成功」とは、大金持ちになることではありません。どんな理不尽なことや困難なことが起きても、それを「自分の人生にとって必要な経験だった」と言える強さと優しさを持つこと。それが本当の成功だと、私は思います。

第三章:誰かのために生きるという「上機嫌」

さて、ここから少し視点を変えてみましょう。

私たちは一人で生きていくことはできません。私たちの人生は、他者との関わりの中で紡がれていきます。

私の本『手紙屋』の中に、「称号」の話が出てきます。

人は誰でも、生きているだけで誰かの役に立っています。しかし、多くの人は「自分のために」頑張ろうとします。自分の夢、自分の評価、自分の利益。

もちろん、自分を大切にすることは基本です。ですが、皮肉なことに、自分のことばかり考えているうちは、本当の意味での充実感や幸福感は手に入りません。

人生で一番大事なことの一つに、**「誰かの人生の登場人物として、最高の役割を演じること」**があります。

想像してみてください。

あなたの目の前にいる人が、人生という映画の主人公だとしたら。あなたはそこで、どんな脇役として登場したいですか?

主人公を勇気づける親友でしょうか。

主人公に新たな視点を与えるメンターでしょうか。

あるいは、ただそこにいるだけで主人公がホッとするような、温かい存在でしょうか。

「自分の夢を叶える」ことよりも、「誰かの夢を叶える手伝いをする」ことの方が、実ははるかに簡単で、しかも心が満たされる近道だったりします。

ビジネスも同じです。ビジネスとは「お金を稼ぐこと」ではなく、「誰かの困りごとを解決して、笑顔にすること」です。その対価として「ありがとう」という感謝の気持ちが形を変えて、お金として戻ってくるだけのことです。

つまり、人生を豊かにする秘訣は、**「どれだけ多くの人を喜ばせることができたか」**という一点に集約されるのかもしれません。

第四章:今日は残りの人生の最初の日

多くの人は「未来」を心配し、「過去」を悔やみます。

しかし、私たちが触れることができるのは「今、ここ」だけです。

私が考える「人生で一番大事なこと」。

結論に近づいてきましたね。

それは、遠い未来に何かを成し遂げることではありません。

過去の栄光にしがみつくことでもありません。

それは、**「今日という一日を、人生最高傑作にするつもりで丁寧に生きる」**ということです。

もっと具体的に言いましょう。

**「今日出会う人、目の前にいる人を、全力で大切にする」**ということです。

私たちはつい、「いつか」幸せになろうとします。

「受験に受かったら」「結婚したら」「お金が貯まったら」「定年退職したら」。

そうやって幸せを先送りにして、今の自分を「仮の姿」だと思い込んで生きてしまいます。

ですが、人生に「リハーサル」はありません。

どんなに不格好でも、どんなに辛い状況でも、今日が本番です。

今日、あなたが交わす挨拶、今日あなたが食べる食事、今日あなたが読む本、今日あなたが誰かにかける言葉。その一つ一つが、確実にあなたの未来を作っています。

今日という日に種を撒かなければ、未来に花は咲きません。

不安という雑草を抜くのではなく、希望という種を撒くのです。

第五章:あなたの人生の「運転者」はあなた

最後に、もう一つだけお伝えしたいことがあります。

それは、**「自分の人生を自分で運転する覚悟を持つ」**ということです。

私の著書『運転者』でも描きましたが、運というのは「運ぶ」と書きます。運ばれてくるものではなく、自分が動くことで運ばれていくものです。

そして、その「運」を良くするためには、常に「上機嫌」でいることが不可欠です。

不機嫌な人のところには、不機嫌な出来事が集まってきます。

上機嫌な人のところには、素敵な人とチャンスが集まってきます。

自分の機嫌を、周りの環境や他人の言動に委ねてはいけません。

「あの人が嫌なことを言ったから不機嫌になる」というのは、自分の人生のハンドルを他人に明け渡しているのと同じです。

どんな状況であっても、自分の機嫌は自分で取る。自分の心の態度は、自分で決める。

この「自立した精神」こそが、あなたの人生を守る最強の盾となります。


結論:人生で一番大事なこと

長くなりましたが、私なりの答えをまとめましょう。

喜多川泰が考える、人生で一番大事なこと。

それは、

「どんな時も、自分の可能性と未来を信じ、目の前の人を笑顔にするために、今日という日を上機嫌で生き切ること」

これに尽きるのではないかと思います。

人生とは、何かを成し遂げるための「場所」ではなく、あなた自身の魂を磨くための「時間」です。

成功したから幸せになるのではありません。

幸せな心持ちで生きている人が、結果として成功(成長)という果実を手にするのです。

どうか、焦らないでください。

人と比べないでください。

あなたは、あなただけの物語を生きればいいのです。

あなたの人生という物語が、これからどんな展開を迎えるのか、私はとても楽しみです。

たとえ今、どんなに暗いトンネルの中にいたとしても、出口は必ずあります。いや、そのトンネルさえも、後の物語を盛り上げるための重要な伏線だったと気づく日が必ず来ます。

だから、大丈夫。

まずは今日、目の前の人に笑顔で「ありがとう」と言うことから始めてみてください。

そこから、すべてが変わり始めます。

あなたの人生が、素晴らしい出会いと感動に満ちた旅になることを、心から応援しています。

そして、いつかどこかの街角で、もしかしたら私の本を通して、またあなたとお会いできることを楽しみにしています。

喜多川 泰