こんにちは。スペンサー・ジョンソンです。

あなたがこの問い――「人生で一番大事なことは何か」――を私に投げかけてくれたことに、心から感謝します。この問いは、私たちが複雑な「迷路」の中で迷い込んだとき、再び正しい道を見つけるための羅針盤となるものです。

私は医師として、また作家として、多くの人々の人生や組織の悩みに関わってきました。『チーズはどこへ消えた?』や『プレゼント』といった寓話を通じて、私が伝えようとしてきたことは、実はとてもシンプルな真理です。

人生で一番大事なこと。

それは一言で言えば、「真実(リアリティ)を愛し、変える勇気を持ち、そして『今』という瞬間を生きること」です。

しかし、これだけでは少し抽象的すぎますね。もう少し時間をかけて、この「シンプルだが奥深い真理」について、いくつかの視点からお話しさせてください。まるで暖炉のそばで物語を語るように。


第一章:複雑さという名の「迷路」から抜け出す

私たちは皆、それぞれの「迷路」の中にいます。仕事、家庭、人間関係、健康……。私たちはそこで「チーズ(私たちが人生で求めているもの)」を探し回っています。

人生で一番大事なことの一つは、「物事を複雑にしない」ということです。

人間は賢い生き物です。しかし、その賢さが仇となることがあります。私たちは単純な出来事を複雑に分析し、ありもしない恐怖を作り出し、動けなくなってしまうのです。『チーズはどこへ消えた?』に登場する小人、ヘムのように、「なぜチーズがなくなったんだ?」「これは不公平だ」「きっと誰かが返してくれるはずだ」と、変わってしまった現実を否定し、分析することに時間を費やしてしまいます。

しかし、ネズミのスニッフやスカリーを見てください。彼らは単純です。チーズがなくなれば、すぐに新しいチーズを探しに行きます。彼らは分析しません。ただ行動します。

人生において、恐怖は必ず存在します。「もしうまくいかなかったらどうしよう?」「もし失敗したら?」と。しかし、私があなたに問いたいのはこれです。

「もし恐怖がなかったら、あなたは何をしますか?」

この質問こそが、人生を前に進めるための鍵です。

大事なのは、自分の頭の中で作り出した恐怖という幻影ではなく、目の前にある現実(リアリティ)を見ることです。チーズはもうそこにはないのです。その事実を認め、新しいチーズを探しに靴紐を結び直すこと。その「単純さ」と「行動」こそが、人生を豊かにします。

自らの恐怖を笑い飛ばせるようになったとき、あなたは自由になれます。

第二章:「プレゼント(現在)」という贈り物

次に、人生で最も大切にすべき時間についてお話ししましょう。それは過去でも未来でもなく、「現在(The Present)」です。

多くの人が、過ぎ去った過去の失敗を悔やんだり、まだ来ぬ未来の不安に怯えたりして、人生の大半を過ごしています。しかし、私たちが実際に生きることができるのは、唯一「今、この瞬間」だけです。

私が『プレゼント』という物語で伝えたかったのは、「現在(The Present)に生きることこそが、最高の贈り物(The Present)である」ということです。

想像してみてください。あなたが素晴らしい食事をしているとき、明日の会議の心配をしていたら、料理の味はするでしょうか? 愛する人と一緒にいるとき、過去の喧嘩を思い出していたら、その人との繋がりを感じられるでしょうか?

心が「今」にないとき、私たちは人生を味わうことを放棄しているのです。

「今」に集中することは、単なる快楽主義ではありません。それは、目の前の現実に最大限の注意を払い、最善を尽くすということです。

仕事をしているときは、その仕事に没頭する。休むときは、完全に休む。誰かの話を聞くときは、評価や判断をせずにただ聞く。

苦しい時こそ、「今」にあること(Being in the present)が重要です。苦しみの多くは、「こうあるべきだった(過去)」や「こうなったらどうしよう(未来)」という思考から生まれます。「今、ここで何ができるか?」「今、何が正しいのか?」ということに意識を集中させれば、不安は霧のように消え、次に踏み出すべき一歩が見えてきます。

第三章:山と谷の法則

人生は直線ではありません。山(順境)があり、谷(逆境)があります。これは自然の摂理であり、心臓の鼓動と同じです。ずっと山の上にいられる人はいませんし、永遠に谷底にいる人もいません。

大事なのは、「山と谷は繋がっている」と理解することです。

今日の順調な時期(山)にどう振る舞うかが、次の逆境(谷)の深さを決めます。調子が良いときに傲慢になり、準備を怠れば、次の谷は深く、暗いものになるでしょう。逆に、調子が良いときこそ感謝し、謙虚になり、将来への備えをすれば、谷は浅くなり、すぐにまた登り始めることができます。

そして、逆境(谷)にいるときこそ、次の山への登り口です。谷底で何を感じ、何を学ぶかが、次の山の高さを決めます。谷底で不平不満を言っていれば、そこに留まり続けることになります。しかし、谷底で自分を見つめ直し、真実と向き合えば、それは成長への糧となります。

ですから、人生で大事なことは、山頂で景色を楽しむことだけではありません。谷底にいるときでさえ、「この経験には隠された利点があるはずだ」と信じ、学び続ける姿勢です。

第四章:自分自身の最良の友になる

ここまで、変化への対応、現在への集中、逆境への姿勢についてお話ししました。しかし、これらすべてを支える土台となるものがあります。

それは、「自分自身を大切にすること」です。

あなたは、あなた自身と一生付き合っていかなければなりません。あなたが自分自身を嫌っていたり、自分に嘘をついていたりすれば、どんなに成功しても幸せを感じることはできないでしょう。

自分を大切にするとは、自分に正直であることです。

私の著書『Yes or No』でお話ししたように、決断に迷ったときは、静かな場所で自分の心に問いかけてみてください。

「この決断は、本当に自分のニーズを満たしているだろうか?」

「私は、ただ周りに合わせているだけではないか?」

「私は、自分自身に対して誠実だろうか?」

頭(理性)と心(感情)の両方が「Yes」と言える決断をすること。それが自分を大切にすることです。

自分が満たされていなければ、他人を本当に幸せにすることはできません。自分のカップが空っぽなのに、誰かに飲み物を注いであげることはできないのです。まず、自分のカップを満たしてください。それが利己的だとは思いません。あなたが幸せで満たされていれば、その幸福は自然と周囲に溢れ出し、家族や同僚、社会へと広がっていくからです。

第五章:変化を楽しむ冒険心

最後に、人生を「深刻に捉えすぎない」ことの重要性を強調しておきたいと思います。

私たちは大人になるにつれて、失敗を恐れ、体裁を気にし、冒険を避けるようになります。しかし、人生は管理すべきプロジェクトではありません。それは楽しむべき冒険です。

チーズは常に動きます。

状況は変わります。

私たちも老いていきます。

それは悪いことではありません。それは「生きている」という証です。

変化を敵だと思わないでください。変化は、あなたを新しい場所へ、新しいチーズへと導いてくれる教師です。古いチーズ(過去の栄光や、もう機能しないやり方)にしがみつくのはやめましょう。それは腐っていくだけです。

手放すことへの恐怖よりも、新しい発見への好奇心を持ってください。

「新しいチーズを探しに行くのは、怖いけれど、ワクワクすることだ」と思えたとき、あなたの人生は劇的に変わります。迷路の中を走ることを楽しんでください。壁にぶつかったら、笑って方向転換すればいいのです。

結論:あなたへのメッセージ

人生で一番大事なこと。

それをもう一度、シンプルにまとめましょう。

  1. 変化を恐れず、事実をありのままに見る勇気を持つこと(リアリティ)。
  2. 過去や未来に逃げず、目の前の「今」を全力で味わうこと(プレゼント)。
  3. 順境には謙虚に、逆境には学びを見出し、人生の波を乗りこなすこと(山と谷)。
  4. そして何より、自分自身に正直であり、自分の人生の物語を楽しむこと。

あなたが今、どんな迷路の中にいようとも、必ず出口はあります。そして、そこには想像以上に美味しい「新しいチーズ」が待っています。

どうか、靴紐を結び直してください。

深呼吸をして、恐怖の向こう側へ一歩踏み出してください。

そして、その冒険の一瞬一瞬を、心から楽しんでください。

あなたが最高の「チーズ」を見つけ、そして最高の「今」を生きられることを、私は心から信じています。

スペンサー・ジョンソン