こんにちは。グレッチェン・ルービンです。

「人生で一番大事なことは何か?」

これは、私が『パピネス・プロジェクト』や『習慣の力(Better Than Before)』、そしてポッドキャスト『Happier with Gretchen Rubin』を通じて、何年もかけて探求し続けてきた問いそのものです。

もし、私があなたにたった一つの答え――魔法の杖のような解決策――を提示できるとしたら、それはとても魅力的でしょう。しかし、私の研究と経験から言える真実は、「人生にはたった一つの正解はない」ということです。

ただし、「あなたにとっての正解」を見つける方法はあります。そして、それこそが私が考える「人生で一番大事なこと」に繋がります。

私が考える人生で最も重要なこと、それは「自分自身を知り、自分自身の性質に合った人生を意図的に築くこと」です。

なぜこれが最も重要なのか、そして、それをどうやって日々の幸福(ハピネス)に変えていくのか。少し長くなりますが、私の哲学のすべてを込めてお話しさせてください。


第1章:すべての基礎は「自己認識」にある

私が『幸福プロジェクト』を始めたとき、私が最初に掲げた個人的な戒律(Commandment)は、「グレッチェンらしくあれ(Be Gretchen)」でした。

これは一見、簡単そうに聞こえますが、実は人生で最も難しいことの一つです。私たちはしばしば、自分が「こうあるべきだ」と思う自分や、他人が「こうあってほしい」と望む自分になろうとしてしまいます。もっと外交的であるべきだ、もっと冒険的であるべきだ、もっとストイックであるべきだ……。

しかし、自分ではない誰かの人生を生きようとすることは、不幸への確実なレシピです。

人生で最も大事なのは、自分の強みだけでなく、自分の弱み、限界、そして「何が自分を本当に喜ばせ、何が自分を疲れさせるのか」を冷徹なほど客観的に知ることです。私はこれを「自己認識(Self-Knowledge)」と呼んでいます。

例えば、あなたは朝型ですか、夜型ですか?

一人でいるときにエネルギーが回復しますか、それとも人といるときですか?

単純化(Simplifier)して物を減らしたいタイプですか、それとも複雑化(Abundance-lover)して物に囲まれたいタイプですか?

これらの些細な「自分の性質」を知ることこそが、幸せな人生の土台となります。自分自身の説明書を持っていないのに、人生という複雑な機械をうまく操縦できるはずがありません。

第2章:習慣は「目に見えない建築物」である

「自分を知る」ことが大事なのは、それが「習慣」を変える唯一の方法だからです。

私がよく言う言葉に、「私たちは習慣の繰り返しでできている」というものがあります。私たちが毎日すること(What we do every day)は、たまにすること(What we do once in a while)よりも重要です。

多くの人が「人生を変えたい」と願いますが、実際には「習慣を変える」必要があります。そして、習慣を変える際に失敗するのは、意志力が弱いからではなく、自分に合った方法を選んでいないからです。

私は人を4つの傾向(The Four Tendencies)に分類しました。

  1. アップホルダー(約束を守る人): 外的な期待も内的な期待も守る。
  2. クエスチョナー(疑問を持つ人): 納得したことだけやる。
  3. オブライジャー(義務を果たす人): 他人の期待には応えるが、自分の約束は破る。
  4. レベル(抵抗する人): すべての期待に反発し、自由を愛する。

人生を豊かにするために最も重要なスキルは、自分がどのタイプかを知り、その傾向を利用することです。

もしあなたがオブライジャーなら、ダイエットや勉強を続けるために必要なのは「強い意志」ではなく「誰かとの約束(外的なアカウンタビリティ)」です。もしあなたがレベルなら、「やるべきこと」リストを作るのではなく、「自分がやりたいからやる」というアイデンティティを持つことが鍵になります。

自分を変えようとして自分と戦ってはいけません。自分を知り、自分を使いこなすのです。それが、持続可能な幸せを築くための「目に見えない建築物」となります。

第3章:幸福の方程式と「成長の雰囲気」

では、自分を知り、習慣を整えたその先にある「幸福」とは何でしょうか?

私は幸福について考えるとき、次の定義を使っています。

「幸福になるには、悪い気分を取り除き、良い気分を増やし、正しいと感じることをし、そして成長の雰囲気の中にいなければならない」

この「成長の雰囲気(Atmosphere of Growth)」という概念は、人生において極めて重要です。

私たちは現状維持では満足できません。何かを学び、何かを改善し、昨日よりも今日、少しだけ良くなっているという感覚。あるいは、誰かの役に立っているという貢献感。これらがないと、どれだけ物質的に満たされていても、人生は空虚に感じられます。

クローゼットを整理するだけの小さなことでもいいのです(私は「外側の秩序は内面の平穏をもたらす」と信じています)。新しい言語を学ぶことでも、親切な行いをすることでもいい。

「成長している」という感覚は、人生の停滞感を打ち破る最も強力な特効薬です。

第4章:人間関係こそがすべて

ここまで自分自身のことばかり話してきましたが、幸福に関する現代科学の発見の中で、最も一致している見解があります。それは、「人間関係こそが幸福の最大の予測因子である」ということです。

もし、人生で一番大事なことを「たった一つの行動」に絞るなら、それは「人間関係を深めること」でしょう。

私たちは、愛し、愛される必要があります。所属感を必要としています。

私の「大人になるための秘密(Secrets of Adulthood)」の一つに、こんな言葉があります。

「相手の気持ちを変えることはできないが、自分の行動を変えることで、関係性を変えることはできる」

不機嫌なパートナーや、難しい同僚に直面したとき、私たちは相手が変わるのを待ちます。しかし、それでは何も変わりません。自分が少しだけ親切にする、自分が少しだけユーモアを持つ、自分が先に挨拶をする。

人間関係を「待つもの」ではなく、自分が主体的に「築くもの」として捉えること。これが、人生の質を決定的に左右します。

第5章:日々は長く、年月は短い

最後に、時間についてお話ししなければなりません。

私が最も大切にしている格言の一つに、「日々は長く、年月は短い(The days are long, but the years are short)」というものがあります。

子育てをしていても、仕事をしていても、困難な時期に直面していても、1日は果てしなく長く感じられることがあります。しかし、ふと気づくと、1年はあっという間に過ぎ去っています。

人生で一番大事なこと。それは、「今、この瞬間を味わうこと」と、「未来のために今投資すること」のバランスを取ることです。

私たちはしばしば、「〇〇になったら幸せになれる」と考えます。昇進したら、結婚したら、家を買ったら……。これを私は「到着の誤謬(Arrival Fallacy)」と呼びます。

しかし、幸せはゴールラインで待っているものではありません。幸せは、そこに向かう道中にしか存在しないのです。

だからこそ、今日という日を「ただやり過ごす」のではなく、味わってください。

朝のコーヒーの香り、家族との何気ない会話、仕事を終えた達成感。それらの小さな瞬間を見逃さないでください。

結論:あなたへの提案

「人生で一番大事なことは何ですか?」

私の答えをまとめましょう。

それは、自分自身を深く知り、その知識を使って、愛する人たちと繋がり、成長を感じられるような「毎日の習慣」を設計することです。

大きな成功や、劇的な変化を追い求める必要はありません。

人生を変えるのは、派手なイベントではなく、地味な火曜日の午後にあなたが何をするかです。

完璧である必要はありません(Don’t let the perfect be the enemy of the good)。

まずは今日、ほんの小さなことから始めてみてください。

自分のベッドを整えることかもしれませんし、古い友人にメッセージを送ることかもしれません。あるいは、1行だけ日記を書くことかもしれません。

その小さな一歩が、あなただけの「幸福プロジェクト」の始まりです。

あなたの人生が、あなたらしく、喜びに満ちたものになりますように。

グレッチェン・ルービンより


あなたへの次のステップ

私の考え方に興味を持っていただけたなら、まずは「自分を知る」ための小さな一歩を踏み出してみませんか?

あなた自身が、習慣を維持するときに「どのようなルールなら守りやすいか」(自分との約束を守るのが得意か、他人との約束がないと動けないか、など)について、直感的にどう感じるか教えてください。あなたが「4つの傾向」のどのタイプに近いか、一緒に考えてみましょう。